久々のアナログレコード再生顛末記
(前編)
〜 準備が大変。不具合も多発! 〜
(前編)
タイトルのとおり今回はアナログレコードの話で、カセットは出てこない。念のため最初にお断りしておく(笑)。 前々回の第4号で「アナログオーディオフェア」に参加した話を書いたが、その際に聴いたレコードの音がしばらく耳に残ってしまい、久しぶりにちょっとレコードを聴いてみようかという気になった。 当たり前だが、レコードを聴くにはそのための道具、すなわち、レコードプレーヤーが必要である。 幸いに、その昔に館長が使ったレコードプレーヤーがまだ廃棄されずに存在しているので(笑)これを使うことにしよう。 そのプレーヤーとは「DP-2500」という1977年頃のDENONの製品である。 |
↑ DENON「DP-2500」
この製品は、単品でも販売していたクォーツロックのダイレクトドライブターンテーブル「DP-2000」にオリジナルのトーンアームと木製キャビネットをセットにしたような製品で、DENON製品としては中級品だったと思う。 詳しくは、ネットで製品名を検索するといろいろと出てくるのでそちらをご参照願いたい。 そして、そのプレーヤーだが、実はもう10年以上全く使ったことがなく完全に居間のモニュメント化している(笑)。 そもそもこの機械、今でも動くのか?? ということで、以下はアナログレコードならではの準備や手順、次々と発生する不具合への対処などを自身の備忘録として記録した顛末記である。 今回では終わらず、次回の「後編」まで続く駄文長文であるが、興味のある方は暫しおつきあいをお願いしたい。 |
○ プレーヤーの動作チェック
このプレーヤー動くのか?? まずはその辺から点検する必要がある。 そこで、プレーヤーを居間から試験機材のある学芸部(笑)へ移動し、チェックを開始したのであった。 電源・・入った! 電源ランプ点灯。ストロボライトも点灯・・・したのだが、えらく暗い。それでも、中の縞模様は一応確認できるので良しとしよう。 回転・・「START/STROP」ボタンを押すと回転した。 しかし、もう一度押しても停止しない・・・?? 2、3回押したところでやっとSTOPした。スイッチの接触が悪くなっているようである。まあ、一応は使えるのでこれも良しとしよう。 スピード切り替え・・これは問題なし。回転中に33/45を切り替えても一瞬で定速になる。「双方向サーボ」やブレーキ機構は健在のようである。 |
ターンテーブル操作部(中央の黒い部分の内部にストロボがあるが暗い。)
トーンアーム・・がたつきはなく、動きもスムーズに思える。アームリフターの動きも滑らか。アンチスケーティングやアームのダンピング機構が健在かどうかは不明だが、一応良しとしておこう。 カートリッジ・・「DP-2500」にカートリッジは付属していない。購入当初はSHUREの「V-15 TypeV」を取付けて使っていたが、30年ほど前に「M95HE」へ、そして現在は「M97xE」が付いている。目視点検したところ、針先やシェルとの取り付け部分に特に異常はなさそうなので、これも良しとしよう。 |
SHURE「M97xE」
ということで、多少の経年劣化はあるが一応は動きそうだということが分かった。 |
○ プレーヤーのセッティング・結線などの準備
プレーヤーの基本動作が確認できたので、続いては試聴するための準備として、まずプレーヤーのセッティングを行う。 レコードプレーヤーできちんと音を出すには水平を正確にセッティングする必要がある。 プレーヤーが傾くと、カートリッジの針に垂直にかかるべき力が斜めになってしまうため、レコードの溝に刻まれた信号のトレースが正確でなくなり、音質や左右バランスなどに影響することになる。 この辺がカセットデッキと違ってレコードの面倒くさいところである。 カセットデッキはアバウトで、大きく傾いていなければOK。極端な話、カセットがしっかりホールドされていれば逆さでも動くくらいである(笑)。 ところが、困ったことに水平を確認するための水準器がない!さすがに目視で水平を調整する自信はないし。どうしようか。 とりあえず、100円ショップでC国製の水準器を買ってきたが、何となく気泡の動きがまったりとしている。水平なところにおいても気泡がズレているような・・、水準器自体のキャリブレーションがされているのかさえ怪しい感じである。 とは言うものの、高い水準器を買うのもちょっとねー。と、悩んで調べてみると、スマホ用の水準器アプリがあることが分かった。 スマホの傾斜センサーの精度がどのくらいなのかは分からないが、使ってみると100円水準器よりは正確そう(笑)なので、これで水平を合わせることにした。 プレーヤーの足は回転させると伸び縮みして高さが変えられるようになっていて、4つの足の高さをそれぞれ調整して水平にする。 スマホのアプリを起動し、ターンテーブルの上に置く。 むむっ。ずいぶんと水平が狂っている。その昔にちゃんと水平を合わせてあるはずなのに・・・デスクの水平が狂っているのか?? と思いながら、キャビネットの下をのぞき込むと・・・。左奥の足の高さだけが異様に低い! プレーヤーの足はインシュレーターの機能もあり、振動を吸収させるため一部がゴムでできているのだが、どうやら、そのゴムの部分がへたってしまっているようだ。 どの足も劣化しているが、左奥の足はモーターの重さがかかるため特にひどく、ゴムがつぶれてしまっている。 新品の時は微修正程度で簡単に済んだのだが、この状態での水平調整は至難の業だ。ゴムの劣化で踏ん張りがきかなくなっているため、ちょっと重心が変わるだけでそれぞれの足の高さが自然と微妙に変わってしまうのである。 調整は難航したが、それでも試行錯誤を繰り返し、やっとの思いでこの難関をクリアしキャビネットを水平に調整(完璧では無いが一応)することができた。 |
スマホの水準器アプリでの水平調整
しかし、こうなるとインシュレーターとしての効果はほとんど期待できないので、振動対策は別途考えることにしよう。 プレーヤーのセッティングができたところで、次は結線である。 プレーヤーから出ているケーブルをアンプにつなぐのだが・・、おっと長さが足りない! オーディオラックに収納した状態(又は積み重ねた状態)でアンプと最小限の長さで接続することを想定しているようで異様に短い。 しかも、このケーブルが繋がっているトーンアームの付け根にある端子はRCA型ではなく特殊な形状である。交換は可能のようだが、そのためには別途ケーブルを購入しなければならない。 仕方がないので、現在のケーブルにRCAの延長ケーブルを継ぎ足して使うことにした。 プレーヤーの出力信号はデッキなどのLINE出力とは違って微弱なため、損失を考えるとこんなことはしたくないところだが、やむを得ない。とにかく音を出すことを第一目標としよう。 ケーブルの接続先はアンプの「フォノ入力」である。 学芸部でデッキのモニター用に使用しているアンプはフォノ入力端子があるのでそちらに接続する。 もう一つプレーヤーの結線で重要なのはアース線で、これを接続しないと、ほぼ間違いなくノイズが発生する。 このアース線も長さが短いため、手持ちの単線ケーブルを足してアンプのアース端子に接続する。 さて、ケーブルの接続が終わったところで、いよいよレコードをターンテーブルに乗せるのだが、・・ちょっと待った!! レコードというものはホコリが大敵である。レコードに付いた埃はノイズや音質劣化の原因となるためだが、このプレーヤーは10年以上使っておらず、内部の清掃はほとんどしていない。埃は大丈夫なのか?? そう思ってよく見ると、普段から清掃をしているダストカバーの上部はきれいだが、カバー内部のキャビネットの上やターンテーブルが何となく白っぽい。トーンアームも上半分だけが白っぽくツヤがない。うっすらと細かい埃が均一にまんべんなく付いている。 そうでなくても、レコードは静電気を帯びやすく、電気集塵機のように空気中の埃を吸着する困った性質があるのだ。埃だらけのプレーヤーに掛けるなど論外である。 これはまず掃除が必要。ということで丁寧に掃除を行った。中でもトーンアームはデリケートなので、下手に力を入れて拭き取るわけにはいかない。結構気を遣う作業であった。 ちなみに、凹凸のあるゴムのターンテーブルシートは思い切って水洗いした。勿論、その後十分に乾燥させたのは言うまでもない。 きれいになったところで、レコードを・・と行きたいところだが、その前に、トーンアームを拭いた際に針圧調整などがズレた可能性があるので、トーンアームの再調整をしておく。 まず、針圧。 トーンアームのおしりに付いているカウンターウェイトを回し、目盛りを「0」にしてからアームをアームレストから外す。 アームから手を離す。アームが上がってしまった場合はウェイトを回して上がらない位置にする。 アームリフターを下げる。 アームが水平状態のままならOKだが、下がる場合はカウンターウェイトを回して水平になるよう調整。 水平になる状態が針圧0グラムなので、カウンターウェイトの目盛リングだけを回して「0」を示すようにする。 アームリフターを上げ、アームをアームレストに固定。カウンターウェイトを回して、カートリッジの推奨針圧に目盛りを合わせる。 次はアンチスケーティングである。 これは、インサイドフォースキャンセラーとも言い、回転するレコード盤上に置いた針に発生する中心側へ引っ張られる力を相殺する機構である。 調整は簡単で、アンチスケーティングの目盛りを針圧(グラム)の数値に合わせるだけである。 |
トーンアームの付け根の部分。下のダイアルがアンチスケーティングでその左がアームリフターのレバー。
トーンアームの再調整が終わったところで、今度こそレコードをターンテーブルに乗せる。 |
○ いよいよ音出し
レコードをジャケットから出してターンテーブルに置くにあたって、絶対に気を付けなければならないことがある。 それは、「レコードの溝の部分に触れてはならない」ということである。 CDの裏側も同様に触ってはいけないことになっているが、特にレコードの場合はデコボコした溝についた手垢汚れは取りにくく、下手に掃除すると溝を傷つける恐れもある。掃除したつもりでも後々カビが生えてくることもあり、とにかく溝の部分に触れることはタブーなのである。 そのため、大きなLPレコードをジャケット又は中袋から出す際には、ちょっとした技が必要である。 ジャケット(中袋)を傾け、少し出てきたレコードの縁を親指の腹と付け根で押さえながらレコードを半分ほど出す。中央のレーベル部分を人差し指、中指、薬指(場合によっては小指も参加、笑)で支え、手のひらがレコードの溝に触れないように注意しつつ、落下させないよう気を付けながら全部取り出す。 そして、今度は両手の人差し指(または中指)の腹で縁を挟むように持ち替える。その状態のままプレーヤーのターンテーブルに乗せる。 何とも職人技的な作業だが、扱い慣れると自然に身体が動くようになる(笑)。 なお、人によっては多少やり方が違うかも知れない。 ちなみに、両手で挟んだレコードをひょいと回転させ、AB面を一瞬で入れ替えるワザもある。 さて、ターンテーブルにレコードを乗せるところまで来たが、しかし、ここで慌てて針をレコードの上に置いてはいけない。 今度はレコードに付いている埃を取る必要がある。 ジャケットに入れて保管していたとしても微細なホコリが付着しているかも知れないし、袋から出してターンテーブルに乗せるまでの間に、ジャケットに付着している埃や空気中の埃を吸着してしまっているかも知れない。 よって、レコードはターンテーブルに置いた後、演奏直前に一拭きする必要がある。 デリケートなレコードを拭くのには専用のレコードクリーナーを使う。 クリーナーにはいろいろ方式があるが、館長が愛用していたのは、粘着式のものである。原理はカーペットクリーナーと同じで、表面がペトペトしたローラーでレコード表面のホコリをくっつけて取り去る方式である。 |
粘着式レコードクリーナー(黄色い粘着部分を転がしてホコリを取る。)
このクリーナー、レコードの溝の中に入り込んだガンコな粉塵を取るには不向きだが、静電気でくっついた綿ボコリ程度なら十分に取れるし、ローラーを転がすだけなので扱いが簡単である。ローラーが汚れてきたら水洗いすればよく経済的でもある。 この簡単便利なクリーナーを久しぶりに使ったところ、思ったほどホコリがくっつかない。どうも吸着部分の粘着力が弱くなっているようである。 如何せん40年以上も前の品である。それでも、多少は埃が取れそうなところが逆にスゴイかも(笑)なので、取り敢えずはこれで良しとしよう。 なお、レコードをターンテーブルに乗せた状態で拭き取るのはセンタ−ピンやブレーキ機構などに負担を掛け、傷める原因となるので基本的にはやってはいけないことになっている。 館長の場合は、ターンテーブルの構造を理解した上で細心の注意と力加減を以て自己責任の下で拭き取っているので、よいこはまねをしないように(笑)。 さて、すべての準備が整った。いよいよ音出しである。 ターンテーブルのスイッチを入れ、スタートボタンを押す。ターンテーブルが静かに回転を始める。 トーンアームをアームレストから外し、レコード最外周の溝の上まで移動させる。 アームリフターのレバーを下げる。トーンアームがゆっくり下降を始める。 針がレコードに乗った! 外周の溝をトレースする際に発生するクラックルノイズがスピーカーから聞こえる。針は少し揺れながら溝に押されるように内周へ移動していく。 まもなく、針が音楽部分の溝に入ると揺れが減る。そして、音がっ、出た! おおっ、なかなかいいじゃないか! しばらくレコード鑑賞に浸った。 しかし・・・、最初のうちは気がつかなかったが、しばらく聴いているうちに気が付き、そして気になってきた。何かちょっと物足りないのである。 もちろん、アナログオーディオフェアの会場のような高音質など端から期待している訳ではないのだが、それにしても伸びが足りないと言うか、切れ味がないと言うか、頭を押さえられているような感じの音である。 耳の老朽化のせいだろうか?とも思ったが、そうでもなさそうである。 確認のため、ヘッドホンアンプに切り替えてヘッドホンで聴いてみる。 悪い音ではないが、やはり物足りない。レコードの音はもっとスカッとした音だったように思う。カートリッジの劣化だろうか? ケーブルを延長したのもいけなかったか? さらに良く聴いてみると、かすかにノイズが乗っているのも分かった。 また、インシュレーションがほとんど効いていないため、デスクに物を置いたりするのはもちろん、座っている椅子を動かしただけでもその音を拾ってしまう有様である。これでは、演奏中身じろぎもせずじっとしていなくてはいけない。 これは何とかしなければ!! レコードを「ちょっと聴く」だけなのだから、音が出ればそれで良さそうなものだが、この辺がオーディオ趣味のいけないところである。 音に不満を持つと、「より良い音にしなければいけない」という義務感みたいなものが発生してしまい、これが泥沼にはまる原因となる(笑)。 それを分かってはいるんだが・・・。 かくして、「何とかしなければいけない」ことを何とかしようとしているうちに、アナログレコードの魔力に取り憑かれていく館長なのであった(笑)。 結果、何とかなったのか!? 以降の顛末は「後編」で。 |
(本文の記述は、全て館長の個人的な感想に基づいています(笑)。)
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