久々のアナログレコード再生顛末記
(後編)
〜 忍び寄るアナログオーディオの魔力 〜(後編)
前回の「前編」に引き続き、アナログレコード再生の後編である。今回もカセットは出てこない。 「前編」では、久しぶりに引っ張り出したレコードプレーヤーで音を出したところまで書いた。 しかし、残念ながら満足できる音ではない・・・ 後編の今回は、それを何とかしようと奮闘した記録である(笑)。 |
使用するレコードプレーヤー:DENON「DP-2500」
では、前編のおさらいとして、その何とかしたい問題点を整理しておこう。 (1) 音がすっきりしない (2) かすかに雑音が乗っている (3) 足のゴムがヘタってインシュレーションが機能しない 以上が主なところであるが、この際、前回明らかとなったプレーヤーの不具合もできれば何とかしたい。 ・スタートスイッチの接触不良 ・暗いストロボ照明 ということで、今回はこれらの問題の解決編である。 |
○ 音がすっきりしない
この原因としては、次のようなことが思い付く。 ・ カートリッジやシェル、ケーブルの取り付け部分での接触不良 ・ ケーブルを延長したことによるもの ・ アーム内を含む接続ケーブル自体の問題 ・ カートリッジの不具合(ダンパーの劣化など) そこで、まずは比較的簡単に確認できる「接触不良」の可能性を潰していくことにした。 最初に、トーンアームからシェルを外し、カートリッジに繋がっているリード線も外す。 シェルの端子部分にCAIG(ケイグ=接点復活液)をごく少量付け、綿棒で軽くこすって清掃する。 リード線の接続金具にもケイグを少量付け、シェル端子に負担を掛けないように軽く抜き差ししたり若干回転を加えたりしながら再接続する。 カートリッジの端子も同様に清掃し、リード線を接続する。 そして、シェルをトーンアームに取り付けるのだが、トーンアームの接点もケイグと綿棒で清掃する。 この接点、あらためて見ると単に端子を突合わせ圧着で接続しているだけである。こういうユニバーサルアームの構造がそもそも音に影響しているのではないかと思ったりもするが・・・、いかんいかん、こういうことを思い始めるのはアナログオーディオ(AA)の魔の手に引き寄せられている証左である。気を付けねば(笑)。 次はトーンアームと出力ケーブルの接続部分である。 プレーヤーをひっくり返し、トーンアームの付け根にある端子から出力ケーブルを抜く。 |
トーンアームの出力端子(プレーヤー裏面)
プラグ側の端子穴にケイグを少量付けて、2,3回抜き差しを繰り返す。 最後に、出力ケーブルと延長コードとの接続部分もケイグを付けて清掃する。 以上、接点の清掃が終わったところで、改めてレコードを聴いてみる。 ・・・。うーん。多少良くなったような気はするが、根本的解決には至っていないようだ。 それにしても、アナログプレーヤーというのは微弱な信号を扱っている割にはその経路に接点がやたらと多い。 今回は接点不良の影響はほとんど無かったものの、結構リスクのある部分ではあるので、気にし出すと「AAの魔力」に引きずり込まれ、いろいろな試行錯誤を始めることになりそうである(笑)。 考えられる次の原因はケーブルの延長によるものだが、これには直ぐに対処できないため、先にカートリッジの原因可能性の方を確認することにしよう。 そこで、昔使っていたSHUREの「V-15 TypeV」がまだ保存してあったので、試しに付け替えてみることにした。 そもそも、なぜこのカートリッジを使わなくなったかというと、値段の高い交換針を買う代わりに、この針代以下で新品が買えた「M95HE」に乗り換えたためである(笑)。 しかし、この「HE」の針先に付いていたダイヤモンドチップがいつの間にか取れて無くなってしまった(orz)ため、現在の「M97xE」にさらに乗り換えたという次第。 よって、この「V-15V」は、針はヘタっているものの一応使用可能な状態のはずである。 早速ヘッドシェルに「V-15V」を取り付け、トーンアームを再調整した。 そして、レコードに針を下ろす。久々の「V-15V」の音は如何に・・・。 おおっ!いいっ! 音が明るく閉塞感がない。そう言えばレコードの音ってこうだったねー、と思い出させる音である! さっきの「M97xE」も悪いカートリッジではないのだが、ダンパーが劣化しているのだろうか? それにしても、それより遙かに古い「V-15V」の方の音が格段に良いとは驚きである。 これで「音がすっきりしない」問題の原因がほぼ判明したようなので、また暫しレコード鑑賞に浸ったのであった・・が、なまじ成果が上がると、さらに音を良くしようという方向に妙にモチベーションが上がってしまう。 ・すり減ったレコード針を替えれば、もっと良くなるはず ・延長ケーブルを使わず出力コードを長いものに取り替えれば、もっと良くなるはず どうやら「AAの魔力」が本格的に忍び寄ってきたようだが、これに抗うのは難しく、身を委ねることに・・・(笑)。 とは言うものの、「V-15V」の交換針なんて今でも売っているのかいな?と思いながらネットで調べてみると・・・、なんと、これがあるのですね。 純正品は製造終了のようだが、JICO(日本精機宝石工業)という会社が互換針を作っているらしい。 しかも驚いたことに、互換どころか純正よりも高性能の「SAS針」という交換針もあるらしい。これはそそられるではないか! 価格は楕円針より高いが、「V-15V」の音がさらに良くなるのなら聴いてみたい!! 早速SASの互換針を注文した。(実際には、さらに高性能な「neo SAS」というのもあるが、さすがに値段が高すぎるのでかろうじて踏み止まった(笑)。) 一方、出力コードとなるとレコード針とは違いマニアック過ぎて製品がない。いや、あるにはあるのだが、バカ高い。いずれもハイエンドオーディオ価格である(笑)。 さらにいろいろ調べていくと、自作のケーブルをオークションに出品している人がいることが分かった。材料費を考えると値段は大変リーズナブルで、何より長さもいろいろ選べるのがありがたい。 早速2mのケーブルを即決価格で落札した。 よーし。これで音をグレードアップする段取りが付いた。 気持ちの高揚が抑えきれず、勢いでシェルの交換用リード線までネット注文してしまった(笑)。 どうも、すっかり「AAの魔力」に取り憑かれてしまったようだ。 |
○ かすかに雑音が乗っている
この問題については簡単に解決できた。 原因は、元々のアース線と延長用の単線との接合が不良だったようで、改めて接合し直したところほとんど雑音は聞こえなくなった。 注文した出力ケーブルにはアース線も長いものが付いているので、交換してしまえばもうこの問題は発生しないだろう。 |
○ 足のゴムがヘタってインシュレーションが機能しない
プレーヤーの脇でパソコンのキーボードをたたくと、その音がヘッドホンからはっきりと聞こえる。 回転を止めたレコードの上に針を置き、デスクを軽くたたいてみると、これまた良く聞こえる。 どこまで聞こえるかといろいろ試してみたところ、ダブルクリップをデスク上で軽く転がしてもその音が聞こえる始末である。 カートリッジの感度ってスゴイ!と感心している場合ではない。こうなると、もうデスク集音器の状態である(笑)。 この問題を解決するには足のインシュレーション機能をどうにかして復活させなければいけない。 まず思い浮かぶのは足の交換だが、さすがのオクでもそこまでは売っていない。 ならば、足はそのままで、何かインシュレーションを働かせる別の方法はないものか・・・。 ネットで探すと、オーディオ用の制震ゴムなるものがあることが分かった。早速取り寄せて足の裏に貼り付けてみた。 う〜ん。少しは効いているように思うが、まだまだ十分ではない。 さらに、ネットで見つけたソルボセインという防振パットも貼り付けてみたが、これはほとんど効果が無い。おそらく、こちらが期待している効果と、この製品の使用目的が違っているせいだろう。 |
足の裏に制震ゴム+ソルボセインを貼ってみた
要するに、デスクの振動をプレーヤーに伝えないように遮断する振動吸収力の高いダンパーを挟めばよいのだ。 この場合のダンパーとしては、何かフワフワと柔らかくて厚みのあるものが良さそうに思う。 極端に言えば風船の上に置くような感じのもの、だが、風船では不安定である。そういう感じのものが何か他に無いか?? 風船→空気→泡・・・、おおっ、スポンジではどうだろうか? と連想で思い付いたが、普通のスポンジではプレーヤーの重さでつぶれてしまうだろう。潰れないような固いスポンジはないものだろうか? と、ここまで考えて、ハタと思いついたのが「○落ちくん」の名で有名なメラミンスポンジである。 それなら結構な堅さがあるし、クッション性もありそうではないか! ということで、某100円ショップでメラミンスポンジの特大サイズを2本購入した。その名も「落ち落ちVキング」。ノイズも「落ち落ち」となるだろうか? まあ、「結局ダメでしたー」という「オチ」だったとしても、この値段ならあきらめがつくというものだ。 |
ジャンボサイズのメラミンスポンジ(1本100円)
早速、その上にプレーヤーを直接載せてみた。 しかし、4つの足にプレーヤーの重さが集中してかかるため、メラミンスポンジの堅さを以てしても大きく沈んでしまう。 ならば、スポンジ全体に荷重をかければどうか?ということで、これも100円ショップで調達した板をスポンジの上に置き、その上にプレーヤーを乗せてみた。 今度は荷重がある程度分散するので、沈み込みはさほどではなくなった。 |
スポンジ+板で構成したダンパーの上にプレーヤーを乗せる
果たして効果はどうだろうか?? 回転を止めた状態のまま、レコードに針を乗せる。デスクを軽くたたく。 おっ! 全く聞こえないという程ではないが、かなり小さい音である。さっきとは雲泥の差である。 脇に置いてあるパソコンのキーボードをたたいてみる。何と、ほとんど聞こえない!こいつはスゴイ。 さすが「落ち落ちVキング」、名前に恥じない。プレーヤーの下敷きになりながらもVサインの余裕である(笑)。 まあ、見た目にハイファイ的な感じがしないのが難点ではある(笑)が、これだけの劇的な効果が400円で得られるとは恐るべきコスパである。100円ショップ、侮り難し。 アナログレコードマニアの方が見たら卒倒しそうな方法かも知れないが、兎にも角にも、インシュレーションの問題はこれで解決したのだった。 |
○ プレーヤーの不具合を修理
基本的な問題は一応解決した。 そこで、注文した交換針などが届くまでの間に、プレーヤーの不具合部分の修理を試みることにした。 プレーヤーを裏返してターンテーブルのカバーを外し、内部を見てみる。 「START/STOP」のスイッチは内部のタクトスイッチに直接連結しているのではなく、機械的な機構を介して動かしている。 どうやら、この機構の噛み合わせに隙間が空いているらしいことが分かったので、少しいじってみたところかなり改善された。 次にストロボの照明をチェックする。 照明に使われているランプ自体は結構明るく灯いているのだが、スモークのカバーを通すとかなり暗くなってしまう。 カバーの内側を擦ってみると指に汚れが付いた。どうやら、カバーの汚れが原因のようだ。 清掃したところ、明るく見えるようになった。あっけなく解決である。 ストロボの縞模様が綺麗に見えるのは気持ちの良いものだ。 |
明るくなったストロボ
○ しかし・・・大問題発生!!
これで様々な問題や不具合がほぼ解消され、レコードのハイファイ再生の環境が整った。 交換針やケーブルの到着が楽しみである。 それまでの間、今の状態で改めてレコードを聴くことにしよう。 機嫌良くレコードに針を置いた・・。ところが、である。左の音が出ない! おかしい(汗)。何が起きたのか? ターンテーブルをいじっている間にアームや接続部分に不具合が発生したのか?? 各接続部分を再度抜き差ししてみる・・・が、直らない。 ひょっとしてカートリッジの断線か? だとすれば最悪、致命的である(汗汗)。 最悪の事態でないことを心の中で祈りながら、原因の切り分けを行う(汗汗汗)。 カートリッジに接続するリード線の配線を左右逆にして、レコードをかける。・・・今度は右からの音が聞こえない! 頭から血の気が引いていく・・・・・。 嗚呼、何てこった。カートリッジ内部の断線確定である(泣)。 しかし、「V-15V」の交換針は既に注文してしまっている・・・。 それに、「V-15V」の音の良さを再確認してしまった今、もう「M97xE」に戻る気も起きない。 こうなったら、新たな「V-15V」を手に入れるしかないっ(キリッ) なんだか話が主客転倒してしまったような気もするが、AAの魔力というのは恐ろしい。 かくして、ヤフオクで中古の「V-15V」を物色することになった。 幸い「V-15V」は結構な数が出品されている。 こちらとしては本体だけ手に入れば良いので、針先不良で安めに出品されていたものを落札した。 何のことはない、結局「V-15V」をあらためて購入する羽目になってしまったのだった・・・orz |
○ そして・・・
注文していた交換針やリード線、落札したケーブルと「V-15V」が次々と届いた。 ハプニングはあったものの、結果良ければ全て良しではないか、と気を取り直してセッティングを始める。 シェルから古いカートリッジを取り外し、入手した「V-15V」を取り付ける。 新規購入したリード線でシェルの端子に接続する。 カートリッジに「SAS交換針」を差し込む。 |
セッティングされた「V-15 TypeV」
トーンアームの付け根から出力ケーブルを抜き、購入したケーブルに交換する。 長いケーブルなので、直接アンプに接続ができるようになったし、アース線の延長も不要となった。 ケーブルのRCAコネクタも以前のものに較べるとずっと高級感がある。何より、先端が金色でピカピカしていると接触不良を心配せずに済むので気分的に良い(笑)。 |
新旧ケーブルのコネクタ(左:新、右:旧)
ケーブルをアンプに接続し、プレーヤーの水平とアームの調整も終わった。 いよいよ、新システムでの音出しである。 針がレコードに載った。 おおおーーっ!! これはイイ! 以前より遙かにクリアーな音である。 ケーブルを交換し、同じ型番とは言えカートリッジも交換したのだから以前と違う音になるのは道理なのだが、どう考えてもそれ以上、いや、格段に良くなっている。 これはおそらく「SAS針」の威力なのだろう。 驚いたのは、レコード内周の曲でも歪みが少ないことだ。 さらに、使われているマグネットが強力なためか、出力が大きく音がはっきりしたようにも感じる。 針が変わると音も変わる、ということを実感した。 |
○ さらに・・・
音が良いというのは嬉しいことだ。こうなると、いろいろなレコードを聴いてみたくなる。 手持ちのレコードだけでは飽き足らず、近所の「○ー○オフ」へ出かけて中古レコードを仕入れてきた。 よーし、レコード三昧だー! |
某オフで入手した中古レコード(洋楽編)マドンナは45回転盤でパワフルサウンド!
同(邦楽編)ただし、右上の岩崎宏美は40年以上前に館長が購入したもの(笑)
オフ入手ではないが、その昔試聴の定番だったイージーリスニング(右の2枚は45回転盤)
レコードを何枚もかけていると、今度は、古いレコードクリーナーの粘着力の持続が心許なくなってきたので、新しいレコードクリーナーも購入してしまった。 |
新規購入したローリングクリーナー(絶妙な粘着力でホコリが気持ちよく取れる!)
あれやこれやでトータルすると結構な物入りになった訳だが、久々にレコードを堪能することができたので良しとしよう。 |
○ それから・・・
数日の間、むさぼるようにレコードを聴いていたが、そのうち段々と飽きてきた(オヤオヤ)。 「AAの魔力」に嵌まっていると、さらに次のステップへ向かってしまうことになるのだろうが、カセットのマニアとしてはここで自制心が働いた。 “レコードはもうこの辺にしておこう” さて、レコードの熱が冷めてくると、レコードの面倒臭い面が気になって段々と疲れてくる。 とにかく、演奏するまでの儀式が多すぎるし、レコード盤への気遣いも、なんだかメディアに振り回されている感じだ。 レコードを趣味にしている人にとってはそういうところも楽しめるのだろうが、カセットを趣味にしている身にとっては、ちと重い。(性格的なものかも知れない。) 割り切ってラフに扱うという手もあるが、そうすると、何となく罪悪感を感じてしまい精神衛生上よろしくない。 自分には、やっぱりカセットが合っているなーとあらためて思った。 そして・・・、レコードプレーヤーは再び居間のモニュメントとなったのだった(笑)。 今度レコードを聴くのは何年後になるだろう。その時もプレーヤーは動いてくれるだろうか? |
(本文の記述は、全て館長の個人的な感想に基づいています(笑)。)
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