〜 アナログオーディオフェアのイベントに参加! 〜
また前回から間が開いてしまった・・・。 今回は、先日開催された「アナログオーディオフェア 2018」のイベントに参加させていただく機会に恵まれたので、その模様についてお伝えしたい。 「アナログオーディオフェア」というのは、ご存じの方もいらっしゃると思うが、「アナログレコードが、さらに楽しくなるイベント!!」として、レコードプレーヤーやカートリッジをはじめ、ケーブル、アンプ、スピーカーの展示、そしてレコードの販売など、アナログレコード関連に特化したオーディオフェアである。 4回目となる今年(2018年)は6月9日(土)から10日(日)にかけて開催された。 フェアでは各ブースでの展示やデモが行われるほか、ホールではイベント(講演)も開催される。 当然ながら通常はレコード関連のテーマで開催されるのだが、今回は初日の第2イベントとして「伝説のカセットデッキを聴く」という異色のイベントが行われた。 しかも、このイベントの主催は、何とあの歴史と格式のある「音楽之友社」なのである。 同社が発行する正統派オーディオ情報誌である「ステレオ(Stereo)」と、最近そちらに急接近している感のある温故知新のオーディオ誌「ステレオ時代」とのコラボとなっている。 カセットに造詣が深い澤村編集長の「ステレオ時代」側へ大幅に偏ってしまった企画なのか? |
話によると、当初は「ステレオ」誌などでおなじみの福田雅光先生所有の「AIWA XK-S9000」とディスクユニオンJazzTOKYOの生島昇店長の「Nakamichi DRAGON」との聴き比べ対決ということで企画されていたようだ。 一方、「ステレオ時代」としても代表選手を送り込みたいと考えた澤村編集長は、以前、当博物館を取材した際に「ドラゴンキラー」の異名を持つ「TANDBERG TCD-3014A」が学芸部に置いてあったことを思い出し、参戦について館長へ打診してきた。 このオファーに対して、館長が二つ返事でOKしたのは言うまでもない(笑)。 かくして、「3014A」が「ステレオ時代」代表として出場することとなり、三つどもえの聴き比べ対決となった。そして、館長も「3014A」の付き添い役で参加させていただけるということになったのである。 ではここで、「TCD-3014A」というのは一体どんなデッキなのか、簡単に紹介しよう。 メーカーの「TANDBERG(タンベルグ又はタンバーグ)」は、ノルウェーの会社である。 ウィキペディアによると、元々は1930年代に創業、ラジオやテープレコーダー、テレビなどを製造していた。アカイが採用した「クロスフィールドヘッド」を開発したメーカーとされており、技術力が高かったようだ。 しかし、1970年代の終わり頃に倒産してしまう。 その後分社化し、オーディオ部門の会社が1980年代中頃に「TCD-3014A」を発売。Ortfonが日本での販売を行ったが、当時の販売価格は49万円もしたらしい。 日本ではほとんど無名のデッキだが、海外では、NakamichiのDRAGONを凌ぐほどのデッキとして「DRAGON SLAYER」(=ドラゴン殺し。日本風に言うと「ドラゴンキラー」)の異名を持ち、ファンも多いようだ。 |
* TANDBERG TCD-3014A *
スペックとしては、独立3ヘッド、4モーター(キャプスタン×1、リール×2、システムコントロール×1)、クローズドループデュアルキャプスタン、フルオープン式カセットローディング、独自のDYNEQ(Dynamic Equalizer)システム内蔵、信号経路はドルビーIC以外全てディスクリート構成、録音ヘッドアジマス・バイアス調整可(いずれも手動・オシレーター内蔵)、リアルタイムカウンター、ピークメーター等々・・・で、f特は18Hz〜23kHz(メタル)、ワウフラは0.06%といったところである。 さて、迎えた当日。事前にフェアの様子を観察しておこうと、館長は集合時間より早めに到着したのだが、驚いた。何とまあ、凄い人出である。 会場の損保会館の廊下が狭いということもあるが、各部屋を移動するのも大変な状況で、特にデモンストレーション中の部屋などは廊下まで人が溢れており、とても中には入れないといった案配である。 2階の大部屋の中の各展示だけは何とか一通り見ることができたが、それだけで人酔いしてしまったので、ちょっと早かったが、イベント会場へ移動した。 会場では、前のイベントであるMCカートリッジの試聴が進行中で、こちらも大盛況。出入口まで立ち見で一杯という状況である。 この後のカセットのイベントはどうだろうか? こんなにお客さんが来てくれるのか? ガラガラだったらどうしよう。不安がよぎる。 そのイベントが終わり、いよいよ準備にかかる。といっても、既に運び込んで頂いてあったデッキを段ボールから取り出してセットするだけである。 接続先のアンプやスピーカーなどは会場設置のものだが、さすがオーディオフェア!これがまた凄い、と言うかすさまじい!! プレーヤー:テクニクスSL-1000R カートリッジ:SHURE V-15 TypeW(生島店長持込) アンプ:ラックスC-900u+ラックスM-900u フォノアンプ:ラックスEQ-500 スピーカー:FOCAL Scala Utopia Evo ケーブル、タップ:ゾノトーン セレクタ:生島店長持込 値段をトータルすると家が買えそう(は大げさか)。 これだったら、お客さんが来なくてもいい。こんな装置でカセットを楽しめるなら、それで充分。多分、こんなことはこの先一生無いだろうし(笑)。 と、ここでRCAケーブルを接続しようとして問題発生! ケーブルの長さが短く、3台接続するとセレクタの置き場所がない! 会場(普段は会館の食堂らしい)にあった丸テーブルを置き台にしたが、アンプ類が収まっているラック棚と干渉。プレーヤーの向きも操作しにくい。 そこで、ラックの向きを変えようとするも、アンプが重すぎて持ち上げられない。 あれやこれやで、準備にかなり時間がかかってしまった。 そうこうしているうちに、スタッフの方から連絡が入った。「入場待ちの列が長くなりすぎているので、お客さんを入れたい」とのこと。 えーっ!! そんなに大勢の方がお待ちとは!! そして、場内は立ち見まで出る大盛況の状態。レコードのフェアなのに、カセットのイベントにこれだけ大勢の方がお集まりとは!? さすがに、MC役の生島店長も「これはカセットのイベントです。お間違えの無いように。」と念を押したくらいである(笑)。 定刻になりイベント開始。公式タイトル「伝説のカセットデッキを聴く」サブタイトル「カセットデッキ三つ巴対決」の幕が切って落とされたのである。 |
* 伝説のカセットデッキ達 *
(左:3014A、中上:RX-505、中下:DRAGON、右:S9000)
まずは、各デッキの保護者(笑)からそれぞれの紹介が行われた。生島店長はDRAGONだけではなく「RX-505」も持参。リバースの実演をして見せた。 そして、いよいよ対決の第1ラウンド。 各デッキでの自己録音テープを再生する。 S9000は「TDK MA-XG」での録音。DRAGONは「maxell UD-I」(何か余裕ですね)。「3014A」は、用意したテープから「maxell Metal Vertex」を選び勝負をした! それぞれが素晴らしい。いや、素晴らしすぎる! ちなみに館長が録音した曲はマドンナのCD「アメリカンライフ」からである。マドンナならではの強烈な音をどこまで受けきれるか、で録音の善し悪しが分かる(と思っている。笑)。 正直鳥肌が立った。450万円(2台で900万円!!)のスピーカーから出る音は尋常ではない・・。録音した当人ですら初めて聞くような音が出ていた・・。 |
* Scala Utopia Evo(@約450万円也) *
続いて、第2ラウンド。 福田先生持参のメタルテープを使ったミュージックテープを各デッキで再生する。 これも、それぞれ味がある音を奏でる。 しかし、「3014A」では高音の伸びが足りない・・。何で?? ドルビー録音とのことだったので、ドルビーBをONにしたが、基準レベルが合わないのか?微妙にアジマスが合っていないのか?ちょっと残念である。 対して、再生ヘッドオートアジマス「NAAC」付きのDRAGONはテープにジャストフィットしている感じで、音の抜けが素晴らしく良い。 最後、第3ラウンドは、課題曲の録再実演である。 課題曲はポールモーリアの45回転盤から「恋はみずいろ'77」(懐かしい!)。これを会場のSL-1000Rを使って演奏するという豪華音源である。 「3014A」はメーカーの推奨テープとなっているマクセルの「MX」を使って挑戦した。 録音途中で、うっかりドルビーがONのままだったことに気がついたが、やむなくそのまま続行。再生音は、やはり高音が抜けきっていない印象となった。だが、これも実力・個性と考えたい。 ドルビー回路の調整が必要なのかもしれないが、今後の課題としておこう。 他の2台も、それぞれ味のある素晴らしい音を聴かせてくれた。本当にこれがカセットの音だろうか。そう思わせる音であった。 これにて聴き比べが終了。 どのデッキが良かったか??会場の多数決にて問うことになった。(何回手を上げてもOKということで。笑) 結果は・・・・「引き分け」! まあ、正確に数えた訳ではないし、お客様もわきまえていて大人の対応をしていただいた感もある(笑)。しかし、いずれも優劣付け難し、という会場の雰囲気があったのは間違いない。 聴き比べが終わり、エキシビションタイムとなった。 生島店長が、去る2月25日に開催された生録会の録音テープを披露。機材は「SONY TC-D5M」でメタルテープ使用、マイクはSHUREとのこと。さすがに生録。切れのある鮮度の良い音だ。 この生録会、館長も参加したかったが、マイクを持っていないのであきらめたのだった。orz ちなみに、生島店長が「カセットデッキを持っている方」と会場に聞いたところ、ほぼ全員の手が上がった。 福田先生、生島店長ともに「メーカーはカセットデッキを作るべきだ」との意見で一致。勿論、館長も同意見である。 予定時刻となりイベントは終了。何だかあっという間の出来事であった。 お客様も、途中退席の方はほとんど無く、最後まで大盛況だった。 店長の終了宣言後、それを待っていたかのように大勢の方がデッキを近くで見ようと押し寄せてきた。 嬉しいことに「3014A」の前にも人だかりが。 近くにいた館長へは、3014Aについてだけではなく、カセットテープについての質問も。 博物館への励ましのお言葉も頂いた。ありがたいことである。 撤収する時間になったので、全てのご質問にはお答えできなかった。申し訳ない。 また、自己録音テープもマドンナ以外に邦楽、洋楽各種用意していたのだが、ご披露する時間が無くちょっと残念だった。 とにもかくにも、実に楽しく、有意義なイベントであった。 このような素晴らしいカセットのイベントが、いずれまたどこかで開かれることを願わずにはいられない。関係者の皆様、是非よろしくお願いいたします!! 最後になりましたが、「ステレオ」誌編集長様、福田先生、生島店長、澤村編集長、フェアのスタッフの皆様、そして何より、お集まりいただいた会場の皆様(特に「3014A」に1票入れていただいた皆様。笑)にあらためて感謝を申し上げます。ありがとうございました。 [追伸] 帰宅後に、会場で録音した「恋はみずいろ'77」をあらためて聞いてみた。 !!!凄まじく良い音で入っている。戦慄するほどだ! カセットに録音した音なのだが、CDを聴くより遙かに良い音である。 う〜ん。アナログおそるべし、と実感した。 (注) 本記事は館長の記憶や伝聞に基づいて作成しておりますので、事実と異なっている部分があるかもしれません。その際はご容赦ください。 また、本文中の音質に関する表現は、あくまで館長の個人的感想です。(脳内イコライゼーションされている可能性がありますのでご注意ください。笑) (2018/06/14 本文の一部変更及び加筆をしました。) (2018/06/16 本文の一部を変更しました。) |
* 3014A と Metal Vertex *
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