大きいことはいいことだっ! パイオニア渾身の大型3ヘッドデッキ!

* 写真のテープは撮影用です。本機はメタルテープには録音できません。(笑) *
○このデッキの特徴
オーディオ機器の総合メーカーであるパイオニアが、満を持して発売した同社初の3ヘッドカセットデッキである。 このデッキの特徴としてまず目を引くのは、その大きさであろう。 通常の他社カセットデッキに較べて高さが1.5倍位ある。 ファンクションスイッチ、メーターやボリュームノブなどもこれまたでかいっ! さらに、余ったパネルの空間を埋めるようにスイッチ類が多数並んでおり、この多機能アピール型のパネルレイアウトは、何ともマニアの心をくすぐる魅力を持っている。 |

* PIONEERらしい、とにかく数で勝負のスイッチ群! *
もう一つ、本機の見た目を決定付けているのはカセットテープの装着部分だろう。 カセットの取り付け方法は当時流行した「正立・フルオープン」タイプ(カセットをリッド内にローディングするのではなく、デッキ表面部分に正立させて直接装着するタイプで、使用中のカセットがほぼ全て見える。)であるが、本機の場合は、さらに走行時のテープやヘッドなどの状態まで見えるよう、ヘッドブロックやカセットの保持機構が筐体の外側に出窓のように飛び出ている構造になっている。 そのため、非使用時にヘッドハウジングを保護するためのダストプロテクターが付いている。 |

* ダストプロテクターを閉めた状態:ヘッド周りを窓から見ることができる。 *

* ダストプロテクターを開けた状態:この状態でもヘッド周りを見られるような窓がある。 *
ヘッドの掃除や消磁も簡単にできるので、汚れたまま放置ということが少なくなる効果もある! |

* ヘッド周り拡大(プロテクター開) *
使用しているヘッドは、「UNI X'tal HEAD」という録再コンビネーションヘッドである。フェライトのため摩耗に強い。 モーターは、録再時のための定速用のものと、早送り、巻き戻しのための高速用モーターを独立させた2モーター方式で、クローズドループ・デュアルキャプスタン方式が採用されている。 |
○操作性
カセットの装着はガイドにはめ込むだけで簡単である。 ちなみに、イジェクトボタンは無く、手で直接カセットを取り外すだけである。 慣れると大変素早く着脱ができるようになる。 |

* 注:写真のテープは撮影用のメタルテープです。このテープに録音はできません。(くどい) *
カセットを装着すると一瞬巻き戻しの動作が行われ、テープのたるみを取ってくれる。(「ATLC機構」というのだそうである。) フルオープンローディングのため、カセットは丸見えである。 テープの残量確認が容易であるのは勿論、テープが回転している様子もよく分かり、その様を見ているのも楽しい。 テープだけではなく、ヘッドの動きやポーズ時のピンチローラーの動きもよく分かるような設えになっており、機械の動きを楽しみながら操作をすることができる。 なお、テープ走行中はガイドがロックされ、取り外しはできない。また、カセットがきちんと装着されないとメカが動作しないようになっている。 このデッキには、テープごとにバラツキのある録音感度を微調整するキャリブレーション機能がある。 本来は、ドルビーNRが正常に働くように録音時と再生時のレベルを合わせるためのものであり、、ドルビー非使用時には不要ではあるが、ドルビー使用の有無に限らず調整しておいた方が気分的に良い。(笑) 調整方法は簡単で、テストトーンスイッチをON→モニタースイッチをTAPEに→録音開始→ メーターが0VUを指すようにキャリブレーションボリュームを調整→完了 である。 調整用のボリュームは小さいが、ドライバを使わなくても指で回すことができる。 |

* RECキャリブレーション関係のスイッチ *
テープセレクターは、バイアス2段、イコライザ3段の独立切換式で、フェリクロムテープ(TypeV)が使える。バイアスの微調整機構は付いていない。 クロムポジションのテープを装着すると、セレクタースイッチの位置に関係なく自動的にクロムポジションの設定になるオートセレクタ機能があるので、うっかりミスが防げる。 なお、メタルテープ登場以前の機種であるため、メタルテープでの録音はできない。(再生はクロムポジションにて可能) |

* バイアス及びイコライザの切換スイッチ *
レベルメーターは大型で、機能重視型デザインのため視認性が良く、レベル合わせもし易い。 メーター表示は-40〜+5dBというワイドレンジであるが、ピークレベルメーターではない。そのため、+5dBで点灯するLEDのピークレベルインジケーターが左右のメーターの間に付いている。 |

* 中央のLEDは上から「ピークレベル+5dB」「録音」「ドルビー」「クロムテープ」の表示用 *
1970年代のデッキらしく、マイクから直接入力が可能で、レベルの調整もLINEとMICが独立しておりミキシングも可能となっている。 出力ボリュームと合わせて3つの大型ボリュームつまみが並んでいるのは壮観である。 各ボリュームは、アッテネーター感覚の41ステップクリック付きというマニアックな仕様となっている。 また、各ボリュームノブの周りには、通常位置の目安となるようメモリーマーカーも付いており、より一層ボリュームノブの大きさを目立たせている。 |

* ボリュームノブ部分の拡大 *
テープの操作は、大型のファンクションボタンで行う。 ボタンは大きいが、ソフトタッチである。軽く押すだけで操作ができる。 大型のソレノイドを使っているため操作音は大きいが、動きは力強く確実である。 「ダイレクトチェンジ方式」となっており、各操作からはSTOPボタンを経由せずに次の操作に移ることができる。 また、各ボタンは機械的なプリセット式になっており、ボタンを押すと、電源が入っていなくてもロックされる。 すなわち、録音ボタンと送りボタンを押し込んでおいてタイマーをセットすると、タイマー録音ができる仕組みである。そのため、本機にはタイマー録音のスイッチは付いていない。 ボタンはテープが終わるまで解除されないため、プログラムタイマーを使うと複数番組の録音も可能である。 |

* 操作ボタン部分拡大:右端はポーズ用レバー *
本機のテープ操作はほとんどが平たい押しボタンによるものであるが、ポーズだけはレバー式のスイッチが使われている。 これはよく考えられていて、レバーを上下するだけでポーズ状態/解除となるため大変操作性がよく、素早い操作が可能である。メカの応答も大変俊敏である。 FM放送の録音において、曲紹介〜曲開始の一瞬の間にテープをスタートさせたり、曲の終わりでアナウンサーが息を吸い込む音を聴いた瞬間にポーズでテープを止めるなど、当時のエアチェッカーにとって必須であった操作に大いに助けになったであろう。(笑) |
図体に似合わず(笑)アクのない素直で明るくスッキリとした音質である。 テープに合わせてバイアスなどのチューニングを追い込む機能はないので、テープの性能を出し切ってはいないと思うが、逆に、それぞれのテープの特徴を楽しむことができる。 そういえば、1970年代においてはデッキとテープとの相性というものが大きな話題となっていた。 当時の雑誌のレビュー記事を見ると、各デッキごとにおすすめテープというものがあり、それは主にメーカーがデッキのチューニングに使用したテープであるが、ほとんどは、デッキの製造メーカー系列のものか、TDK、maxell製のテープである。 パイオニアの場合はテープの製造メーカーではないが、70年代の中頃はアメリカのメモレックス社のカセットを販売していた。 では、その当時のメモレックスのカセットとの相性は抜群だったのでは? ということで、当時のメモレックスのクロムテープとTDKーSAとの録音再生比較実験をしてみた。 その結果・・・ どちらも良い。と言うか、老朽化した我が駄耳では違いがほとんど分からなかった。(笑) |

* TDK「SA」 *

* MEMOREX「Chromium Dioxide」 *
いずれにしても、テープとの相性が激しい機種ではない。どこのカセットを使っても良い音が出るように回路設計・調整をしたのであろうか。(そういうことができるのか分からないが。) ちなみに、1990年代以降のテープを使用すると、切れの良いすっきりとした音を聴かせる。 製造後40年近く経ってもほとんど摩耗のないフェライトの3ヘッドの威力も大きいのであろう。 オーディオ専門メーカーであるパイオニアの当時のフラッグシップ機。さすがである。 ついでに・・・その他のテープを装着してみた写真を以下に。(音質と関係ありませんが。笑) |

* ↑オープンリール型テープ・・TEACのではなくてすいません。 *

* ↑現役の透明タイプのテープ「SONY HF」 *
○機能 他
当時のカタログからの抜粋。 ・ドルビーシステム(LED表示付き) ・バイアス/イコライザ独立切替スイッチ(クロムテープ自動切換機構付き) ・ライン/マイク入力ミキシングコントロール ・メモリー付きテープカウンター(オートストップ/オートプレイ) ・入力レベルリミッター ・ドルビーキャリブレーション機構(400Hzテストオシレーター内蔵) ・ピッチコントロール(±6%) ・ACアウトレット ・パラレル入出力ジャック |

* リアパネル:左下に2組ずつの入出力、右上にACコンセントがある。 *
○スペック
こちらも当時のカタログからの抜粋。 ・録音ヘッド:UNI X'talフェライトヘッド ・再生ヘッド:UNI X'talフェライトヘッド ・消去ヘッド:フェライトヘッド ・定速ドライブ用モーター:電子制御DCモーター(ジェネレーター内蔵) ・早送り/巻戻用モーター:DCトルクモーター ・回転むら:0.05%以下(WRMS) ・周波数特性: (一般、LHテープ)20〜17,000Hz(30〜15,000Hz ±3dB) (クロームテープ)20〜19,000Hz(30〜17,000Hz ±3dB (フェリクロームテープ)20〜19,000Hz(30〜17,000Hz ±3dB) ・S/N:(一般、LHテープ・ドルビーOFF) 54dB以上 (一般、LHテープ・ドルビーON) 64dB以上(5kHz以上) クロムテープ使用時はさらに4.5dB向上(5kHz以上) ・ひずみ率:1.3%以下(0dB) ・操作部:ソレノイド駆動、ダイレクトチェンジ可能およびタイマー駆動用プリセット可能 ・使用半導体:IC×4、トランジスター×98(内FET4個)、 ダイオード×96(内ツェナーダイオード×7、LED×4) 他にモーター制御用としてIC×1、トランジスター×3、ダイオード×2 ・消費電力:38W ・外形寸法:420(W)×187(H)×362(D)mm ・重 量:11.7kg ・付属品:ステレオ接続コード×2、ヘッドクリーニングキット×1 ・価 格:123,800円 |

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