優美な外観をまとったモンスター!
Nakamichiのコンシューマー向け超ド級デッキの第2世代
○このデッキの特徴
本製品は、その名が示すように、1973年に初代が発売された「Nakamichi 700」シリーズの第二世代機である。 超高性能なカセットデッキを世に送り出し続けたNakamichi(ナカミチ)の代表作と言えば「Nakamichi 1000」シリーズ(1000、1000U、1000ZXL)と、この700シリーズであろう。 1000シリーズは同社のフラッグシップであり、とにかく最高性能を追求したマシンという色合いが強く、テープメーカーのリファレンス機などの業務用機として使われることも多かったようである。 一方、700シリーズの方はというと、1000シリーズの性能は受け継ぎながら、デザインにもこだわったコンシューマー向けの高級オーディオ機器、といった位置付けだったように思う。 |
* 手前が「1000U」(当時の広告から) *
二代目となる本製品は、見た目こそ初代とあまり変化がないが、細かいところも含めてかなりの改良が加えられている。他社であったらデザインを変えて別名で新発売するところかも知れない。(笑) とにかく、1970年代のオーディオファンなら誰でも知っていたであろう、それほど有名なデッキである。 名前は聞いていても、当時の定価で21万円とオープンリールの2トラ38機に肩を並べる「超カセット的」な高価格デッキであり、上位機の「1000U」とともに憧れの機種であった。 この高価格ということが一番の特徴になるかもしれないが、それは、「Nakamichiのデッキ」としての種々こだわりを実現させたがために、結果として価格を押し上げているところもある。 それぞれを少し細かく観察していくことにしよう。なお、1000Uと共通する特徴も多い。 【特徴:その1】 アジマスへのこだわり Nakamichiデッキに共通する思想の一つに、ヘッドアジマスへのこだわりがある。 アジマスとは、ヘッドのギャップとテープ進行方向との角度のことで、直交していること(テープに対してヘッドギャップが90度になっていること)が理想である。この角度がずれるとヘッドとテープ間での磁力のやりとりに損失が大きくなり、主に高域特性の劣化につながる。 テープスピードが極端に遅いカセットテープの場合、アジマスずれによる高域劣化への影響が大きいため、テープの性能を極限まで引き出すためにはアジマス調整が不可欠である。 また、録音ヘッドと再生ヘッドのアジマスがお互いにずれていると、さらに影響が大きくなる。(録音したデッキと異なる機械でカセットを再生した時に高音が伸びない原因はこれであることが多い。) カセットテープの場合、テープを走行させる機構はカセット本体内にもあるため、アジマス調整はカセットごとに行う必要があり、さらに、AB面それぞれにおいても別個に調整する必要がある、というのがNakamichiの考え方で、とにかくアジマスに対するこだわりは一筋縄ではない。 そのこだわりから、本製品には「アライメント・ビーコン」という録音ヘッドのアジマス調整を行うための装置が付いている。 これは、録音・同時再生が可能な3ヘッドの利点を活かしたもので、基準信号を録音・同時再生しながら録音ヘッドのアジマスを再生ヘッドに合わせるように調整するというものである。 調整は簡単で、テストトーンのスイッチをONにし、信号を録音しながら2つのLEDが交互に点滅するよう、調整つまみを回すだけである。 なお、このとき調整するのは録音ヘッドだけである。再生ヘッドのアジマスは絶対的に正しいものとして、それに録音ヘッドを合わせるように調整する。 |
* 調整パネル部のドアを開けた様子(左側がパネル部分) *
* 中央に上下あるLEDがアライメント・ビーコン、左下がアジマス調整のツマミ。
ドアの裏側(写真右半分の部分)に調整の仕方が英文で書いてある。 *
ヘッドブロックには再生ヘッド(PH)のアジマスを調整するネジも一応付いているが、これはサービスマン向けのもので、触れられないように透明のシールが貼ってある。 【特徴:その2】 独立型3ヘッドへのこだわり 前述したように、本製品は3ヘッド構成であり、しかも、録再ヘッドを一体化したコンビネーションヘッドではなく、消去、録音、再生が各々独立したヘッドで構成されている。 この独立3ヘッド構成へのこだわりもNakamichi流であり、後年になると、自社の3ヘッドデッキを「Discrete Head Cassette Deck」と呼んでいたほどである。 カセットテープは、その構造故にテープとデッキの機構が接触できる部分が限られている。 その限られた接触面を有効に活用するために生まれたのがコンビネーションヘッドなのだが、Nakamichiの場合は、限られたスペースに3つの独立ヘッドだけではなく、2つのピンチローラーまで詰め込んでいる。(笑) 実際は、下の写真のように、再生ヘッドだけは優遇されていて通常の大きさをしているものの、録音ヘッドは隣の小窓から、消去ヘッドに至っては送り側ピンチローラ脇の隙間から差し込む形でテープにタッチさせるため、かなり変形した形状になっている。 |
* ヘッドとピンチローラー部分の拡大 *
* 左から、巻き取り側ピンチローラー、再生ヘッド、録音ヘッド、送り側ピンチローラー、その右脇のテープガイド状のものが消去ヘッド *
【特徴:その3】 ヘッド材質へのこだわり Nakamichiの場合、ヘッドの材質についてもパーマロイ系へのこだわりがある。 パーマロイヘッドは性能は抜群だが、摩耗しやすいという欠点がある。耐摩耗性を改善した「ハードパーマロイ」でもフェライトヘッドには遙かに及ばない。 1970年代初めに登場したクロムテープは、ヘッドを摩耗させやすいテープでもあったことから、メーカーの多くは摩耗に強いフェライトヘッドに移行していった。 しかし、Nakamichiの場合は音質を優先するということなのだろう、特に、微弱な磁気を拾わなければならない再生ヘッドについてはパーマロイ系のヘッドを使い続た。 本製品も再生ヘッドには硬質パーマロイヘッドが使用されている。 そして、摩耗しやすいというパーマロイヘッドの短所に対して「摩耗しても性能が落ちないヘッド形状にする」というアプローチを行っている。 一般的には、ヘッドが摩耗するとギャップ部分にテープがジャストミートしなくなったり、テープの一部がヘッドからわずかに浮いたりする、いわゆる「ヘッドタッチ」の変化により性能が劣化するのであるが、Nakamichiの解決策は、ある程度摩耗してもこのヘッドタッチが変わらないようなヘッド形状にするということだった。 |
* 再生ヘッド(左)と録音ヘッド(右) *
本製品の再生ヘッドを見ると、先端が異様に尖っている。 確かにこれだと多少すり減っても断面形状は変わらない感じである。 また、片減りせず均等にすり減っていくような工夫もされていたようである。 なお、本製品の録音ヘッドと消去ヘッドにはフェライトが使われている。 【特徴:その4】 デザイン このデッキの一番大きな特徴は、その独特なデザインかも知れない。 まず、表面積がデカい。幅が52センチ、高さが27センチもある。 しかし、奥行きは13センチしかなく、要するに水平型のデッキを起こしたような感じである。(実際、水平型デッキとして倒した状態でも使えるような足が裏側に付いている!) |
* 水平に置いてみたところ *
* デッキ裏面 *
* 写真上部の左右に水平置き用のゴム足があるのが分かる。 *
その大きい表面の上側およそ2/3ほどの部分は分厚いアルミパネルで覆われている。 その下は黒いプラスチックのパネルとなっており、この部分にメーターや各種スイッチ、ボリュームなどが配置され、全ての操作を表面だけで行うことができるようになっている。 アルミパネルの部分には、縦に並べられた大きい操作ボタン、カセットリッド及びアジマス調整パネルのドア が あるだけで、しかも、それらは左に寄せて配置されているため、右半分は何もないパネル面となっている。 カセットのドアを閉めると上側ほぼ2/3の部分が一面銀色になる。 ただし、側面と裏側の外装は木製になっているので、アルミ板が大きい割には冷たい感じはあまりしない。 |
* 側面は暖かみの感じられるウッドケースになっている *
とにかく、銀色に輝くアルミパネルが大変ゴージャスで存在感抜群である。(笑) 冒頭では「優美な外観」と表現したが、その大きさからすると「威風堂々」と言った方が良いかもしれない。 1000シリーズが業務用機を意識した機能優先のデザインであるのに対して、700シリーズは、コンシューマー用オーディオ機器としてリスニングルームでの使用を考慮したデザインになっているように思う。1000Uとは違った独特の存在感である。 なお、初代の「700」と本製品はほぼ同じデザインであるが、カセットドアの窓が大きくなっていることと、操作ボタンがタッチセンサーになったことが見た目上の主な違いとなっている。 |
* 初代「1000」と「700」(当時の広告から) *
【特徴:その5】 カセットの装着方向 デザインにも関係することであるが、このデッキの特徴としてカセットの装着方向が挙げられる。 ほとんどのデッキは、ヘッドが下から(コンポ型デッキの場合)又は手前側から(水平型デッキの場合)テープに当たるように設計されているため、カセットは横長方向で装着する。 ラジカセの場合はヘッドが上から降りてくるものもあるが、それでも上下がひっくり返るだけで横長で装着することに変わりはない。 しかし、このデッキの場合は、ヘッドが右からテープに当たるようになっているため、何とカセットを縦長方向で装着するのである。 |
* カセットをリッドに差し込んだところ *
縦長で入れるデッキは、TEACの製品や外国製のものに例があるが非常に少ない。それは、メカの配置の都合やカセットラベルが読みづらくなるなどの理由で敬遠された故と思われる。 1000は一般的なローディングなのに、なぜ700だけ縦長装着としたのか、その理由は定かではないが、 カセットラベルが読みづらいという問題点に関して、Nakamichiはカセットテープのラベルデザインを縦長仕様にすることで解決している。(笑) |
* 当時のNakamichiのカセット(リッドのふたをはずして撮影) *
* 写真のカセットは当時のNakamichiのもの。ラベルの記載が縦長仕様になっている! *
【特徴:その6】 手作りの工芸品 本製品の取扱説明書の冒頭の記述によると、 「製品はベルトコンベアを使用せず、1台1台念入りに組み立て、ミクロン単位で完全に調整されております。誤った使い方をされると、かえって調整を狂わせ、性能を十分に発揮できなくなる場合があります。ぜひ取扱説明書を良くお読みになって、正しい使用法をマスターされるよう、お願い申し上げます。」 うむむむ・・、もはや単なる工業製品ではない。工芸品、いや、芸術品の域に達しているかもしれない。 Nakamichiデッキは使う者を選ぶ。取説の隅々まで全て熟読玩味し正しい使用法をマスターしなければならない。それまでは触ってはならない。心して使うべし、である。 【特徴:その7】 重い 本製品、とにかく重い。13sもある。 表面の厚手のアルミパネル、内部の骨組みに頑丈なスチール、キャプスタン用の超大型フライホイールが2つ、モーターも2台、大きめのトランス、電子部品を大量投入した基板、等々。こりゃ重くなる訳である。 本製品の大きさは先に述べたが、カセットデッキであるにもかかわらず、その大きさといい、重さといい、オープンリール並みである。 その昔、あるオーディオ評論家が「オーディオ製品は重いほど音がよい」的なことを言ったとか。本製品は、まさにそれを具現化していると言えるだろう。 |
○操作性
前述のように、カセットの装着は、テープの露出面を右側にしてカセットリッドに入れる。
テープの操作はカセットリッドの左側に縦に並んだ操作「ボタン」で行う。 しかし、これらは実は押しボタンではなく、エレベーターなどでよく使われているタッチ式の静電スイッチである。 よって、ストロークは全くなく、触れた瞬間に動作する。(録音ボタンだけは触れてから一拍おいて動作するように調整されている。) レスポンスはすばらしく良い。逆に、ちょっと触れただけで動作するため、大事な録音中に不用意に停止ボタンに触れたりしないように注意しなければならない。 |
* 操作ボタンを斜め横から見たところ(出っ張った部分が無い) *
また、テープが横向きになっているので、早送りと巻き戻しの方向にちょっと戸惑う。上側のリールに巻き取るのが早送り、下側のリールに巻き取るのが巻き戻し・・と頭では分かっていても、瞬間的にどっちのボタンを押したら良いか躊躇する。(歳のせいかも。笑) ボタンの配列順序についても若干の問題がある。 送りボタンが一番上に付いているのは良い。2番目が停止ボタンというのも常識的、なのだが、その下の2つのボタンがよろしくない。 テープが上方向へ進む「早送り」のボタンが(テープが下向きに進む)「巻き戻しボタン」の下に付いている。 これは逆だと思うのだが・・・。 実際、ややこしい。必ずと言って良いほど逆を押してしまう!(やはり歳のせいか orz) その下には録音ボタンとポーズボタンが並んでいる。本製品の場合、この2つの同時押しで録音ポーズ状態に入るため、これらは妥当な配置だと思う。 さて、本題に戻る。 録音操作に入る前に、まず、前述のアジマス調整を行う。 準備として、調整箇所までテープを早送りする。テープの端部はハブ止めクリップの跡が付いていたりしてデリケートな調整には不向きなので、新品のカセットでも1〜2分相当を送った位置で調整した方が良い。 準備ができたら、調整パネルのドアを開けて、パネルにあるテストトーンスイッチをONにする。 テープセレクタとイコライザのスイッチを使用テープに合わせ、モニタースイッチを「tape」にする。 録音ボタンと送りボタンを押して録音スタートさせる。 調整パネルに縦に並んだ2つのビーコンが交互に点滅するように「RH」(録音ヘッド)調整つまみをゆっくりと回す。 ビーコンが交互に点滅すれば「録音ヘッドのアジマス=再生ヘッドのアジマス」ということになるので、テープをストップさせる。これで完了である。 慣れてくると、点滅する位置の合わせ方が何となく読めてきて、なかなかおもしろい作業になる。 |
→ →
* アライメントビーコン(上下2つののLED) *
* 写真左、中は調整がずれている状態。上下が交互に点灯する(右の状態)よう、つまみを回してアジマス調整する。 *
説明書によると「カセットを変えたら(A面からB面に変えても)録音する前に必ず一度アジマス調整を行ってください。」となっている。FM放送をAB面連続で録音しようとする場合は大変である(笑)。 ちなみに、説明書によると「再生ヘッドの垂直調整は、工場出荷の際に完全に合わせてありますので、調整の必要はありません。」となっていて、再生ヘッドの調整ネジはシールで封印されている。 次はレベル調整(キャリブレーション)である。 この調整は、内蔵の400Hz発信器を使って録再音のレベル合わせを行うもので、特にドルビーNRが誤動作しないようにするために重要な調整である。 作業手順は、まず、上記でアジマス調整した後、テストトーンスイッチはONのままでモニタースイッチを「source」に変える。 |
* 各種ボリュームやスイッチの操作部分 *
* 上段は左から、ブレンドマイク、マイク、ライン入力、出力の各ボリューム、 下段は左から、キャリブレーション調整穴、各種セレクタ(バイアス、EQ、ドルビー、モニター)、電源スイッチ *
この時、レベルメーターが左右とも0dBを表示することを確認。(0dBにならないときは、デッキの裏側にあるテストトーンレベルのつまみで調整する。) そして、ドルビースイッチを「in」(ドルビーを使用しない場合は「out」)、テープを録音状態にしてモニタースイッチを「tape」に変える。 モニタースイッチを変えてもレベルメーターが0dBを表示したままになるよう、「record calibration」の穴に小さいドライバを突っ込み、中にあるボリュームを回して調整する。 キャリブレーションの調整ボリュームは、テープの種類別(EX、SX)に左右それぞれがある。 ちなみに、テープ種別はナカミチ独特の呼び方で、「EX」はノーマルポジション(LH)テープ、「SX」はハイポジション用のテープである。 以上の調整を終えて、次は録音入力の調整に移る。 まず、テストトーンボタンをOFFに戻すことを忘れずに(笑)。 モニタースイッチを「sourse」に切換える。 入力調整は、ライン、マイク、そしてブレンドマイクが独立しており、ミキシングが可能である。 ラインとマイクの調整は2軸の回転ボリュームなので左右独立で調整可能である。しかし、左右のバランスを変える場合は、一緒に回転しないよう片方をおさえておく必要があり、つまみの径も小ぶりのため、細かい調整をする場合はちょっと気を遣う。 この辺が1000Uとは違い、デザイン重視のコンシューマー用機という感じである。 ブレンドマイクというのは、左右の中央に定位されるマイク(要するにモノラルのマイク)である。この調整つまみも他のつまみと同じ形をしているので、あたかも左右調整(パンポット)ができるように見えるが、実は一体型に成形(接着?)されたつまみなので左右調整はできない。 レベルメーターは、-40〜+10dBというワイドレンジのピークレベルメーターである。このメーターを見ても本製品の高性能ぶりが窺える。 |
* レベルメーター(-40〜+10dBのワイドレンジピークメーター) *
メーターの-8dBの位置に赤い印が付いているが、これは取扱説明書によると「2トラ38pからダイレクトコピーをする場合、2トラの0dBをこの位置に合わせておくとピーク入力があっても良好な録音状態得ることができます。2トラの飽和点は+15dBぐらいとされていますので、ピーク時でも+7dBぐらい(での録音)となり歪みが大きくなることを防ぐことができます。」とある。 うむむむっ、そもそも、2トラ38pのオープンデッキからのダイレクトコピーを想定していることが凄いではないか! しかも+15dBのピークって生録音源??・・・・ 説明はさらに続く・・「クラシック音楽におけるピアニッシモは-35dBぐらいといわれています。本機のレベルメーターはそれ以下のノイズレベルまで正確に読み取れ、しかもフォルテの大きなレベルまで指示します。」・・・ ・・・Σ(゚д゚;)ノイズレベルマデセイカクニ・・・ とにかく、レベルメーターのスケールだけ見てもこのデッキ只者ではない。 メーターの照明も良い。電球色とはちょっと違ったオレンジ色の透過照明になっており、周りを暗くするとその高級感が半端ない!! 録音入力の調整が終わったらテープをスタート位置まで巻き戻し、録音ボタンとポーズボタンを同時押しして、録音ポーズの状態にする。「record」と「pause」の小さいランプが点灯する。 調整の説明が長くなったが、いよいよ録音本番スタートである。 送りボタンに軽く触れると「pause」のランプが消えて「play」の緑色のランプが点灯、内部のソレノイドが作動して、録音が開始される。 操作ボタンはストロークが全くないので、本当に触れるだけで作動する。 触れるだけで大型のソレノイドが作動するというのは、大変に小気味よいものである。 テープの回転は小窓から見ることはできるが、照明が暗いため、大まかな残量を確認する程度しかわからない。 日本製のデッキはメカが確認できるように作られているものが多いが、欧米のオーディオ機器はできるだけ隠す傾向があるように思う。 日本のファン向けに先代の700よりは窓が大きくなったが、それでも欧米志向であるということか。 能ある鷹は爪を隠すということかも。 録音を終了させるときは「stop」ボタンに軽く触れるとランプが点灯し、ソレノイドが解除される。 他のメーカーではほとんどないのだが、ナカミチのデッキは「stop」のファンクションランプが付いているものが多い。 電源を入れている間はほぼ点灯状態なので、こういう古い機械になるとランプ切れが心配になる(笑)。 |
○音質
本製品はバイアスの微調整ができない。 指定テープである、ナカミチのノーマルタイプのカセット「EX」「EXU」、クロムポジションの「SX」で調整されており、性能諸元はこれらの使用が前提となっている。 ここでは「SX」のOEM元と言われる当時のTDK「SA」を使って試聴してみよう。 録音中にモニタースイッチを「source」から「tape」に切り替えてみる。 ・・・音の違いがほとんど感じられない! 古いテープなので、聞き込めばノイズが若干増えたかな、ちょっと出力変動があるかな、という感じはするものの、音自体は全くと言ってよいほど同じである。 うーん恐るべし。 音質自体は、いわゆる「ナカミチサウンド」と言っていいだろう。 「重厚な」というか「濃厚な」というか、それに加えて「立ち上がり・粒立ちの良い」サウンドである。 とにかく、聞いた瞬間に「あ〜いい音」と思わず唸ってしまう。 ただ、このナカミチサウンドはテープを再生した音と言うより、実はライン入力を「source」でモニターした音が既にナカミチサウンドになっている。 どういうことかと言うと、入力した音はデッキの中で、録音する前の段階で既にナカミチサウンドに変身しているのである。 再生した音は、その「source」の音を忠実に録音、再生した結果ということになる。 録音ヘッドがフェライトなので、録再音は明るい方向へシフトしているのかと思ったが、そういう傾向は特段感じられない。 とにかく、出力から流れ出るのはナカミチサウンド。これがNakamichiのデッキと言うことなのだろう。 そう言えば、CDを聴くのに、ナカミチのデッキを通して聴いた方が良い音がするという人がいた。なるほどね。 まあ、古い機械なので新品時とは多少音質が変わっているのかもしれないが、いずれにしても、同世代の他のカセットデッキとはレベルの違う音の良さだと思う。 試聴に使用したテープが古いせいか、若干出力が不安定だったが、最新のSAを使うと安定性が増して、ノイズ感も減り、ますます本領を発揮する。・・・素晴らしい!! 特性的にはどうなのだろう。ということで、新しいテープで周波数特性を測ってみた。 |
* ↑ R-ch 録再特性(20〜20kHzスイープ,-20dB)*
* TDK「SA」(オーストラリア向け最終版製品)使用 *
* ↑ 同 L-ch *
* ↑スイープ信号の元特性(モニター「source」,LINE OUTで測定) *
・・・って、こ、これが、約40年前のデッキ!? w(゚o゚)w オオー! 若干ハイ上がりな特性になっているが、この特性の効果か、新鮮な音に聞こえる(笑)。 さすがに当時の超高額デッキ。メタルテープがまだ登場していなかった時代に、当時のクロムポジションテープ使用で35〜20,000Hz、SN比65dBのスペックは伊達ではない。 Nakamichi恐るべし!! |
○機能
・独立3ヘッド ・タッチボタンによるICロジカルコントロール ・ドルビーシステム(MPXスイッチ付き) ・バイアス/イコライザ独立切替スイッチ ・ライン/マイク/ブレンドマイク入力(ミキシング可/DIN規格マイクコネクタ付き) ・メモリーリワインド ・アライメントビーコン(アジマス調整機構) ・録音レベルキャリブレーション ・ピッチコントロール(±6%) ・フルオートストップ ・リモートコントロールソケット ・ピークレベルメーター |
* デッキ上部にあるコネクター端子 *
○スペック
・録音ヘッド:フェライト ・再生ヘッド:ハードパーマロイ ・消去ヘッド:フェライト ・キャプスタン用モーター:DCサーボモーター ・リール用モーター:DCサーボモーター ・回転むら:0.05%以下(WRMS) ・周波数特性: 35〜20,000Hz ±3dB (ドルビーNR in, SX,EXUテープ使用) ・総合S/N比: 65dB以上(ドルビーNR in,Wrms,400Hz,3%歪) ・総合歪率:1.5%以下(400Hz 0dB) ・消去率: 60dB以上(1kHz,飽和レベル) ・チャンネルセパレーション: 35dB以上(1kHz 0dB) ・クロストーク: 60dB以上(1kHz 0dB) ・バイアス周波数: 105kHz ・使用半導体:IC×9、トランジスター×138、ダイオード×54 ・消費電力:60W(最大) ・外形寸法:520(W)×267(H)×130(D)mm ・重量:約13kg ・価格:210,000円 ・別売アクセサリー:リモコンユニット(RM-10) 9,000円 |
このページのTOPへ