ポータブルカセットプレーヤーを買った U
〜 まさかの「maxell」のプレーヤー! 〜
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今回の学芸部だよりは、新製品のカセットプレーヤーを買ったので、その使用レポートである。 以前、学芸部だより第16号で「AUREX」のカセットプレーヤーの使用レポートをやったが、今回取り上げるのは何と「maxell」(マクセル)のプレーヤーなのだ。 maxellと言えばカセットテープなどの記録メディアでおなじみだが、それを使うハード機器についてはほとんど聞いたことがない。(遙か昔の1950年代に「ジェムフォン」というテープレコーダーを発売したことはあるらしいが・・・。) とにかく、maxellのカセットプレーヤーが発売されたということだけでも驚きなのだが、さらに、何で今さら? カセットプレーヤーを?? という大きな疑問が湧く。 実はこの製品、「maxell」を名乗ってはいるが、製造・販売しているのは「株式会社電響社」という会社で、マクセル株式会社ではない。 といっても決してパチモンではない(笑)。 その電響社のサイトにあった本製品のニュースリリースによると、 「電響社は、2023年4月よりマクセル株式会社からライセンスをうけ、マクセルブランドのコンシューマー向け製品を製造・販売しています。」とある。 要するに、一般向けのmaxellブランドの製品のほとんどは電響社が製造・販売を行うことになったようで、このプレーヤーも電響社の製品なのである。 若干ややこしい状態だが、ライセンス契約に基づいて「maxell」ブランドを使った製品である以上、マクセル公認ということにはなるだろう。 ちなみに、maxellのカセット「UR」も、現在はマクセルではなく電響社の製造・販売に移行している。 |
現行「UR」の裏面の表記
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さらに、ニュースリリースによると、 「電響社は、長年愛されるマクセルブランドのカセットテープ関連の製品を開発・販売することで、新たにカセットテープに興味を持ち始めた方々にその魅力と価値を伝えながら、カセットテープ文化のさらなる発展に貢献してまいります。」 なんと素晴らしい!!! 今回発売されたプレーヤーは「カセットテープ文化のさらなる発展」のために「maxell」ブランドのコンシューマー向け製品の一つとして、電響社が企画開発して発売したものなのだ。 カセットを愛する博物館の館長として、これは感極まって泣けるほど嬉しい話である。 今回リポートするのは「MXCP-P100S」という型番の製品で、今年(2025年)8月20日に発売されたものである。 実は、先の5月に「MXCP-P100」という製品が既に発売されており、「P100S」はmaxellのカセットプレーヤーとしては第2弾目の製品となる。 「P100」との違いはスピーカーが付いたことで、これによりヘッドホンをつながなくても音が聴けるため、カセットのちょい聴きをしたり、多人数でカセットを聴くということができるようなり、便利に使えるようになった。 「P100」の方は発売後に一時売り切れになるほどの人気ぶりで、館長はタイミング悪く入手できなかったのだが、「P100S」が発売されたことを聞きつけて早速購入したという次第である。 前置きが長くなったが、それではリポートを始めることにしよう。 まずは開封場面から(笑)。 |
今回もYカメラさんに発注。梱包がしっかりしているので安心
外箱(表)
maxellのロゴが・・・
同(裏)
こちらにもmaxellのロゴが・・・
箱の中には本体、USBケーブル、取説が入っていた
取説にもmaxellのロゴが・・・
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外箱や取説などの記載をよく読めば電響社の製品だと分かるが、パッと見た感じではmaxellのロゴしかないので、マクセルの製品のようである(笑)。 内容物や梱包方法などAUREXのプレーヤーと酷似している。製造元は同じ中国メーカーなのだろうか?? 今回購入したのは全体がホワイトのタイプ。ブラックのタイプもある。 それでは、本体の外観から見ていこう。 |
表面(カセットホルダー側)
中央の出っ張った部分にスピーカーがある
操作ボタンは上部にまとまっている(ここにもmaxellのロゴが・・・)
裏面
中央部分にあるのは、ベルトなどに挟むためのクリップ
側面
(上から)ボリューム、Bluetoothボタン、
ヘッドホン端子、充電用端子(USB-C)、表示ランプ
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外装は全てプラスチック製で、エッジに丸みを持たせた形状になっている。 ホワイトタイプといっても全体が真っ白ではなく、上下側面はダークグレーのカラーリングになっていてかっこいい。 大きさ的には、Aurexとほぼ同じだが、表・裏にスピーカーやクリップが付いている分、厚みが1センチほど大きくなっている。 全体の丸みの持たせ方がAUREXとは異なり、手になじみやすい形状になっており、滑り止め加工や適度に凹凸があることで片手での取り回しがしやすく、AUREXよりコンパクトな感じがする。。 操作ボタンを上にして立てて使えるというのも使い勝手の良いポイントだ。 また、カセットホルダーを上側に置いて使う場合、下側にクリップがあるのでガタガタと不安定になるかと思ったが、意外と安定している。 使い方を想定したクリップの形状や荷重バランスが考えられているようだ。 |
左:AUREX、右:maxell
上から見るとほぼ同じ大きさである
同
全体の丸みの付け方が異なっている
右のmaxellは、この項状態だと下にクリップがあるのだが、意外とガタつかない
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一方で、やや難点がある。 カセットホルダーを開けるためには、ホルダーに付いている指がかりの突起を手前に引くのだが、突起がホルダーの片側にしかなく、指先でこじ開けるような感じになり、ちょっと開けにくい。 両側に突起があれば、中指と親指で挟むようにしてもっと楽に開けられると思うのだが・・・。 おそらく、クリップを使ってベルトなどに差した状態で上側となる部分だけに突起を設けているのだと思うが、机上等で使用することも多いと思うので、この辺は配慮がほしかった。 ホルダーの開閉状態をキープするバネが固く、その割に突起が小さいため力が入りにくく、余計に開けにくい。(カセットの安定走行にはバネの固い方がよいのだが。) デザイン的に突起を避けたいということであれば、ホルダーの両側に凹みを設けることでもよいと思う。次回作ではこの辺の改善をお願いしたいところである。 |
カセットホルダー正面
開閉のための指掛かりとなる突起が右側にしかない
カセットホルダーを開けた状態
ホルダー内側の右奥にあるバネが結構固く、ホールド力がある
カセットはこのように入れる
(ピンボケですまぬ)
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カセットホルダーにはスピーカーが付いているため、カセット確認用の窓はその脇にスリット状に配置されている。 この窓からは送り側のハブの部分しか見えないので、現行「UR」のような透明ハーフのカセットであればテープの残量確認が可能だが、昔のタイプのカセットだとハブが回転してるかどうかくらいしか分からない(笑)。 |
中のカセットの見え方(左:現行「UR」、右:70年代の「UD」)
右の「UD」だと中のテープの様子は全くわからない
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操作は押しボタン式。当然ながらソフトタッチボタンではなくメカニカル式である。 操作ボタンは狭い範囲に凝縮されているような感じの集中配置である。 4種類しかないのだから、もう少し余裕を持って配置しても良いのでは? と思うが、内部メカの関係もあるのだろう。 一番目立つのは赤いボタンで、録音ボタンのように見えるが、これは「STOP」ボタンである。 そう、本製品は再生専用機なので録音ボタンはないのである。 「PLAY」ボタンは横長で最も大きい。その上に早送り、巻戻しのボタンが配置されている。 それにしても、AUREXもそうだったのだが、本製品もカセットホルダー側を上にして置いた際に操作ボタンの文字が上下逆さになる。これはなぜなのだろう?? この状態で文字が正立した方が使いやすいと思うのだが。 |
操作ボタン
左上から、STOP、早送り、巻戻し、下段はPLAYボタン
カセットホルダーを上にして置くと、操作ボタンの表示やmaxellのロゴが上下逆になる
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各ボタン同士の隙間が狭いので干渉しやすく、特に中央にある早送りのボタンが押しにくい。 誤操作しそうだが、完全に押し込まないと動作しないストロークの大きいボタンなので、間違えてちょっと押したくらいでは誤動作は起きず心配は無用である(笑)。 ただ、テープを止めるときに赤いストップボタンを押すのには一瞬のためらいを感じる。 一般的に赤いボタンというのは録音ボタンであり、迂闊に触ってはいけないと脳に擦り込まれているせいなのだろう。 再生中にテープが終了した場合はオートストップが働くが、早送りや巻戻しの場合は働かないので、必ず停止ボタンを押して操作を解除する必要がある。 また、再生中のキューやレビューには非対応である。 この辺の仕様はAUREXと同様なので、基本のメカは同じものなのだろう。 |
ヘッドまわり(カセットホルダーを一時的に外して撮影)
消去用のヘッドはない
再生用ヘッド
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それでは、いよいよ試聴に移ることにしよう。 この製品はリチウムイオン電池内蔵の充電式である。 充電は、手持ちのスマホの充電器かパソコンに付属のUSBケーブルをつなげて行う。 Bluetoothに対応しておりワイヤレスイヤホンも使えるが、残念ながら館長は持っていないので、試聴は有線のヘッドホン及び内蔵スピーカーで行うことにした。 まずは、ヘッドホンをつなぎ、他のデッキで録音したテープをセットして、再生ボタンを押す。 ・・・・・ うむ。なかなか良い。 ナローレンジ気味ではあるが、まとまりは良く、パンチのある元気な音である。 次に、内蔵のスピーカーで聴いてみる。 ・・・・・ これは、まあ、見た目どおりだった(笑)。 昔懐かしい、小型のラジオを彷彿とさせる音である。 音質はともかくとして、スピーカーが内蔵されていると、カセットの内容確認、会議録音の再生、複数人で聴く場合などに大変便利で重宝する。 さて、実際の音は分かったが、数字的にはどうなのか。 本製品は周波数特性やワウフラッターなどの特性は公表されていないので、実際のところを当館のレビューのお約束として実測をしてみることにした。 (以下の結果は、あくまで購入した機器の実測であり参考値です。) まずは、周波数特性から。 |
周波数特性 (L)
同 (R)
いずれも20〜20kHzのスイープ信号を録音したテープを再生
(画像をクリックすると拡大されます。)
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なんと8kHzあたりから激落ちしている。10kHz付近で10dBほど下がり、それ以上はほぼ壊滅状態である。 せめて10kHzくらいまではある程度の特性がほしいところだが・・・。 また、全体的にフラットな特性ではなく、1kHz以下はダラ下がりで、1〜8kHzがカマボコ状になっている。 最も聞こえやすい帯域を重視しているのかもしれないが、会議録音用ならともかく、音楽鑑賞用としてはちょっと残念な特性だ。 まあ、この特性でフラットにすると物足りない音になってしまうかもしれないので、パンチが感じられるような音づくりを敢えてしているのかもしれない。 それでは次にワウフラの測定。 測定にはSONY製テストテープ「WS-48A」(3kHz)を使用した。ワウフラメーターは持っていないので、パソコンのソフトにて測定する。 |
ワウフラッター
(画像をクリックすると拡大されます。)
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PEAKで0.48%、RMSで0.28%前後となった。 概ねAUREXと同じ数値である。同じメカを使っていると思われるので、数値も同じということのようだ。 しかし、この製品、たしか、金属製のフライホイールを使って回転むらを抑える、というのがウリの製品ではなかったか。 |
外箱の裏面にある記載
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金属製なので、プラスチックよりは慣性力が期待できるかもしれないが、スペースの関係で大きさが限られることでさほどの威力は発揮できず、効果は限定的なのかもしれない。 そもそも、ベースに使っている中華製メカの性能が性能なので、多少工夫したとしても残念ながら思ったほどの効果が出ないということかもしれない。 なお、テープスピードが若干速かったが、AUREXほどではなくギリギリ許せる範囲かと思う。 まあ、AUREXもそうだが、こういうものは実測値などという細かいことは気にせず気楽に楽しむのが一番である。 ということで、しばらくの間、他のデッキで録音したカセットやミュージックテープを聴くことにした。 この製品はノーマルポジションのテープ用だが、ハイポジやメタルテープも再生可能である。 ハイポジやメタルを再生する場合、本来ならイコライザーを70μsに切り替え、高音域を抑える必要があるのだが、本製品の場合は件の周波数特性のおかげで、抑えるべき高音域がそもそも出ない(笑)。 よって、イコライザーを切り替える意味がないため、ノーマル、ハイポジ、メタル、いずれのテープも差し支えなく再生できる(高音が出ないという大きな差し支えはあるものの)。 フェリクロムテープだって使えるのだ(笑)。 言い換えると、TypeTからWまで全タイプ対応の再生機とも言えるのである。 |
館長愛用のヘッドホンで鑑賞(プレーヤーよりデカい。笑)
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無駄に長い文章で、多少辛口のコメントをしてしまったところもあるが、カセットのファンとして、まさかのmaxellブランドでウォークマンタイプのカセット機器を発売していただいた電響社さんには大感謝である。 これからも「カセットテープ文化のさらなる発展」のため、maxellブランドでカセット関連の製品を世に送り出していただけることを切に願い、期待をしている。 |
○ スペック (取扱説明書より)
(カセットプレーヤー部)
| ・ | トラック方式:4トラック 2チャンネル ステレオ |
| ・ | テープ速度:4.8p/秒 |
| ・ | 早送り/巻戻し時間:約3分(C60) |
| ・ | 対応テープ:ノーマルポジション TypeT C90以下 |
(ワイヤレス部)
| ・ | 通信方式:Bluetooth Version5.4 |
| ・ | 通信距離:最大10m |
| ・ | プロファイル:A2DP、AVRCP |
| ・ | コーデック:SBC |
(共通部)
| ・ | スピーカー:直径50o×1 |
| ・ | スピーカー出力:500mW |
| ・ | ヘッドホン出力:1mW+1mW |
| ・ | ヘッドホン出力端子:φ3.5oステレオミニジャック |
| ・ |
再生時間:約6.5時間(スピーカー) 約9時間(ヘッドホン接続) 約7時間(Bluetooth接続) |
| ・ | 充電時間:約2時間 |
| ・ | 電源入力:USB Type-C DC5V 1.5A |
| ・ | 外形寸法:122(W)×45(D)×91(H)mm(突起部含む) |
| ・ | 質量:約235g |
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同梱品:充電用ケーブル(USB・A-Type・C)約75p 取扱説明書(保証書付) |
(おわり)
(本文の記述は、全て館長の個人的な感想に基づいています。
また、機器の実測結果は当館で購入した個体のものです。)
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