念願の「TDK 歴史みらい館」を見学!
〜 創業の地に佇む瀟洒な博物館でTDKの実力を知る! 〜
タイトルからお分かりのように今回も訪問記である。 コロナ禍が落ち着いたということもあって、このところ各所訪問が続いている館長なのである(笑)。 今回訪問したのは「TDK 歴史みらい館」という施設。 名前で分かるように、かつてのカセットテープの雄「TDK」の企業博物館である。 この施設にはTDKのカセットが大量に展示されているらしいということや、TDK初のカセット「Synchro Cassette(シンクロ・カセット)」の実物を見ることもできると聞いていたので、かねてから「行ってみたいー」との思いはあったのだが、なかなか実現には至らなかった。 そうこうしているうちにコロナ禍が始まってしまったという訳なのだが、このたび、全国旅行支援に背中を押されつつ(笑)、この博物館を訪問することとなった。 この施設があるのはTDKの創業の地である秋田県のにかほ市というところ。 秋田駅までは新幹線を使い、羽越本線に乗り換える。最寄りの仁賀保駅からは歩いて10分弱。そして、いよいよ念願の施設に到着したのだった。 |
モノトーンのカラーリングで瀟洒な雰囲気の建物
(ちょっと天気が悪かったのが残念。)
入り口脇には案内の掲示板が。見た目にはおしゃれな民間の事業所のような建物なので、この掲示板がないと一般の人は入りにくいかもしれない。 |
○ 館長さんにお話を伺う
展示を拝見する前に、この「TDK 歴史みらい館」について、館長のTさんからご説明を伺うことができた。 それによると・・・ TDK創業70周年を記念し「TDK歴史館」として2005年に開館。当初はTDKの歴史が展示のメインだった。 TDK製の電子部品は古くから様々な機器に使われてきていることを知ってもらうため、開館にあたって、古い電気製品を探し集めて展示した。 集めた電気製品は、修理をして使えるようにしたものも多い。 2016年には、地元への貢献施設として、より子供達に興味を持ってもらえるよう、未来を体験できる「みらいゾーン」を加え「歴史みらい館」としてリニューアルオープンした。 歴史ゾーンの展示もより分かりやすく内容も充実させた。歴史ゾーンでは、OBが説明スタッフとして協力してくれている。 TDKは基本的に部品製造がメイン。現在もスマホなどに欠かせない重要部品などを製造しているが、製品自体は一般になじみが薄いかもしれない。 その中で、カセットテープはTDKの名前で一般に販売された製品のひとつだった。 とのこと。 ・・・なるほど。 将来ある子供達に興味を持ってもらうというのは大切なことだ。 何より、創業の地の地元に貢献しようとするコンセプトが素晴らしい。 カセットが専門の博物館の館長としては、もっぱら「歴史」の方が興味のメインなので(笑)、「歴史ゾーン」の展示も充実しているというお話を伺い、期待に胸を膨らませながら、いよいよ展示を拝見することになった。 |
○ 見学開始!
順路では、最初が「歴史ゾーン」となっている。 早速、カセットテープの展示コーナーへ突進(笑)。 カセットだけではなく「記録メディアのあゆみ」という括りでの展示になっている。 |
壁一面を埋めつくしたTDKの記録メディア群。
カセットテープだけではなく、オープンリール、ビデオカセット、
MD、CD-R、DVD-R、フロッピーディスクなどもある。
↑ これこれ、これですよ、壁一面のこの展示。これが見たかったー。 その中でも特に見たかったのがこれ。↓ |
「Synchro Cassette」
このTDK初のカセット「Synchro Cassette」、実は館長も実物を見るのは初めてなのだ。 パッケージのカセットの図柄は絵ではなく写真のようだ。カセットのパッケージに写真が使われている例は少なく、珍しい。 カセット本体のサイドの表示は「A」「B」ではなく「1」「2」となっている。右上に小さく丸囲みされた「TDK」の表示がある。 この他のカセットも懐かしいものばかりである。 では、ざっと紹介していこう。 |
(上段左から)AE,AD,SR,AD1,AD2,AD-X,OD
(下段左から)IF,if,MA-R,MA-XG,AR-X,SA-X,MA-X
(上段左から)F,SD,SD(米国版),D,ED,KR,SA
(下段左から)AD-S,AR,AD-X,SR-X,SA,MA
(上段左から)D,AD,DS,AE,SF,SR
(下段左から)SA,HX,MA,SR-Limited,MA-EX
(左から)D,SUPER-D,SA,SA-X,MA(いずれも海外版),
CV-II,NANA,BEAM1,Optima O2,Optima O4,OPTIMA-2,CDing1,CDing2
上の写真の左上端の海外版「D」は日本版同様ノーマルタイプ(TypeT)の製品。その下の「SUPER-D」は名前から「D」の上位となるノーマルLHタイプと思いきや、実はハイポジ(TypeU)の製品。名前を略すと「SD」になるのだが、日本とは違う。 また、右端の「Optima」は見かけたことがないと思ったら、こちらも海外向けの製品のようだ。パッケージにカセットのハブが貼り付けてあるように見えるのだが、これはそのように見えるデザインだった。 |
(左から)MA-XG Fermo,CDing-I,CDing-II,CDing METAL,CDing-1,CDing-2,WALKER CDingII,SUPER CDingII,SUPER CDing-I,SUPER CDingII COLOR EDITION
(左から)CDING 1,2,CDing1,2,CDing-I,II,IV,SF(海外版),SA(同),
SA-X(同),MA(同),MA-X(同), DJ-2,DISC JACK
↓↓ |
「T1」と「T2」
知る人ぞ知る、幻のカセットである。 何と、録音時間をユーザーが自由に決められるカセットなのだ。 幻の製品なので正確な仕組みはよく分からないのだが、A面のサプライ側のテープ残量が一定の状態になると、それ以上テープが進まないようにロックがかけられるようだ。 ロックは任意の位置でかけられるので、往復で最大70分までなら、録音するCDなどに合わせ自由に録音時間が設定できる。 なぜ幻のカセットかというと、実は発売されていないからである。 透明なリーダーテープではない場所でテープを強制的に止めてしまうと、オートストップやオートリバースが作動しないデッキが存在し、故障の原因になりかねないためのようだ。 館長も、この製品の本体をまじまじと見るのは初めてである。 皆さんもご興味があると思うので、ご覧いただこう(笑)。 |
「T2」のカセット本体
全体のデザインが左のリールを中心とした同心円をイメージしている。
下の部分の縞々模様も同心円になっているのが面白い。
また、他にも興味深い展示として、エンドレスカセットの中身があった。 |
左のエンドレスカセット「EC-3M」の内部メカは右のようになっている。
左のリールに巻かれたエンドレステープは、リールの中心部から引き出されて外周に戻ってくる。 右のリールはエンドレスの機構に関係ないのだが、ほとんどのデッキやテレコは右のリールが適度に回転していないとオートストップが働いてしまうため、右のリールを回転させる仕組みが組み込まれている。 記録メディアの展示はカセットだけではない。 ビデオカセットやCD-Rなども展示されている。 |
各種ビデオテープ,DDS,CD-R,DVD-R,フロッピーディスク,ストレージ用テープ など
さて、カセットの話が長くなってしまったが、「歴史ゾーン」に展示されているのは記録メディアだけではない。 広いスペースにレトロな家電や電子機器が所狭しと並べられている。 担当の方からご説明をいただきながら拝見した。 懐かしモノ好きな館長としては、見ているだけで懐かしいやら楽しいやらで時間を忘れてしまう。 ここではその一部をご紹介しよう。 |
↑ 磁気テープはTDKを代表する民生用の製品だった。それを扱うテープデッキなどのオーディオ機器が展示されている。 上の写真中央は、オープンデッキ華やかなりし時代のSONYベストセラー機「TC-6360A」。その向こうのカセットデッキはVictorのメタル対応戦略機「KD-A5」か。どちらも時代を象徴するデッキだ。(レコードプレーヤーはTechnics「SL-3350」?) 写真では見えないが、さらにその向こうには初代ウォークマン「TPS-L2」が何と動作する状態で展示されていた。OBの方が修理して稼働させたとのことだ。もちろん2つのヘッドホンで同時に聴ける。館長も試聴させてもらったが、懐かしい音の響きだった。 |
↑ TDKのアイデンティティーとも言える「フェライト」は古くから家電の部品に使われている。ブラウン管時代のテレビではヨークコイルのコアやフライバックトランスという必須部品に使われていた。 ここに展示されている白黒テレビもOBの努力による実働品。力道山のプロレス映像を流すという演出がニクい(笑)。 |
↑ TDK創業間もなくの製品。 写真上は1938年のポータブルラジオで、同調コイルにフェライトコアを使った世界初の製品。 写真下左は手動発電式の懐中電灯(レバーを握ると中の発電機が回転しライトが点く)で、下右は自転車用の発電機(いずれも1937年製)。 |
↑ 写真上は、戦後間もなくのスーパーヘテロダイン方式のラジオ。 GHQの命令で、性能の劣る従来のストレート方式のラジオが禁止され、この方式のラジオが量産された。 スーパーヘテロダイン方式のラジオに必要な部品である中間周波トランス(IFT=写真下)にはフェライトコアが不可欠で、TDKがその唯一の供給元だった(!)ため、TDK飛躍の礎となったらしい。 このラジオではないが、実働する真空管式ラジオの展示もあった。 |
↑ TDKが手がけたカセットデッキやビデオデッキ用のオーディオヘッド。 「TEAC」の名前も見える。アモルファスのコンビネーションヘッドもある。 |
↑ TDKはハードディスク用のヘッドも製造している。 1965年に100kbpsi(bpsi=ビット/平方インチ)だった記録密度は、技術の進歩により50年後の2015年には1.1Tbpsiと1000万倍になった。 そう言えば、初期のノートパソコンのハードディスクは数十メガバイトしかなかった。 |
↑ こちらは機器の小型化に貢献した積層チップ部品の紹介。 小型化され片手で持てるようになったビデオカメラなどの展示。 写真左手前にある初代ファミコンにも使われていたらしい。このファミコンも動作品なので実際に遊ぶことができる。 |
↑ その他にもTDKの部品は、数々の機器の中で使われてきた! ということで、「歴史ゾーン」を後にして、続いては「みらいゾーン」へと進む。 |
みらいゾーン
ここでは、「スピントロニクス」(これについては、館長の理解を超えているのでコメントは差し控える。笑)や車の自動運転のシミュレーションの体験などができる。 イベントやワークショップなども行われているようだ。 また、「インタラクティブ・マグネティックフィールド・シアター」という、磁場を可視化し「磁性」を疑似体験できる部屋もある。 |
↑「インタラクティブ・マグネティックフィールド・シアター」
壁、床、天井全面に映像が映し出される。壁に触ると映像が変化したりして面白い。
↑写真では分かりにくいが強力な磁力で浮いている球。何だかSFみたいで不思議。
(上の球が本物。床が鏡面になっているため、下に映っている。)
いやいや、実に見どころが満載の展示だった。 が、しかし、この「TDK 歴史みらい館」はこれで終わりではない。 実はもう一つ、目玉と言える施設が併設されているのである。 |
その施設というのは、「TDK ゲストハウス」というレストランである。 TDKの社用施設をランチタイムのみ一般開放しているということのようだ。 ウェブサイトで見ると、食材には地元産品が使われ大変美味しそうだし、雰囲気は高級レストランのようである。それにもかかわらずとてもお手頃なお値段となっている! つまり、このレストランも地元貢献の一つなのだろう。 その意気やよし! これは協力しない訳にはいかない。ということで館長も利用させていただくことにした(笑)。 ゲストハウスはセキュリティエリア内にあるため、利用するには受付で申込みを行い、案内してもらう必要がある。 ランチタイムのみなので営業時間は11〜15時、ラストオーダーが14時と早めになっている。 時間ギリギリだったが、なんとか利用させていただくことができた。 館長が注文したのは地元由利牛を使った「赤ワイン煮込み」。これで820円(税込)は安い! ↓ |
「由利牛の赤ワイン煮込み」
一口食べてから慌てて写真を撮ったので若干お見苦しいかも m(_ _)m
日本海を望みながらいただく食事は格別で、お味の方も期待以上だった! このレストラン目当てに来館する人がいるというのも頷ける。 5月の連休中は2時間待ちの人気だったそうだ。 確かに、これはオススメである。 |
窓の外には日本海!
写真左にある階段を上ると「方角石」というものがあり、展望台になっているようだ。日本海の絶景が見られそうなのだが、あいにくこの日は雨模様の天気。大変残念である。
○ そして最後のお楽しみ!
さてさて、気分は満足、お腹は満腹になったところで、いよいよ最後のお楽しみ。 「TDK 歴史みらい館」名物の「カセットガチャ」に挑戦だ(笑)。 |
TDKのカセットテープのミニチュアがカプセルに入っているガチャガチャである。 入っているのは「TDK 歴史みらい館」限定品の「Synchro Cassette」「D」「AD」の3種類のうちいずれか1つで、1回500円となっている。 館長は5回やってみた。・・・・・その結果は後ほど(笑)。 |
○ 見学を終わって
来ることができて良かったー。 館長としては、「Synchro Cassette」の実物に出会えたのが一番。さらには、数々のTDKカセット、懐かしいレトロ家電や電子機器までも見ることができ、もう大満足である。 TDK製品の真の実力は様々な機器の中で密かに発揮されているということも良く分かった。 何より、TDKが今でもカセットを大事にしていることが分かり嬉しかった。 これからも日本のモノづくりの一翼を担い続けていっていただきたいと願う。 さて、それではガチャの結果発表−−−−−!! |
「Synchro Cassette」(写真左)が4つ、「AD」(写真右)が1つという結果であった。 それぞれ、細部までよく再現されていて本物そっくり。 チェーンはカセット本体に取り付けるが、カセットをケースに入れた状態でもチェーンが使えるようになっている。↓ |
貴重な「Synchro Cassette」を4つもゲットできたのは嬉しいが、「D」がゼロというのはちょっと残念。 こりゃぁ、また訪問する必要がありそうだ(笑)。 |
(お忙しい中ご対応いただいたT館長様をはじめ、スタッフの皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。)
(館内の写真撮影は原則自由とのことですが、今回はHPへの掲載も含めて事前に撮影のご了解をいただいております。)
(本文の記述は、全て館長の個人的な感想に基づいています。)
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