〜 紙箱編 〜
* SONY「COMPACT CASSETTE」 *
第2回から長い期間が開いてしまった。 不定期で締切もないので、うっかりしているとこうなってしまう。 まあ、このコーナーの記事を期待している方はほとんどおられないとは思うが、館長兼学芸部長兼学芸部員である自身の備忘録のようなものなので、ボケが進まないうちにできるだけ書き留めておくことにしたい(笑)。 第3回目となる今回は、カセットテープの紙製パッケージの形状バリエーションについていくつか紹介したい。 カセットテープが紙製の箱に入って販売されていたのは、主に1960年代から70年代前半位までのカセット初期の時代である。 その当時もプラケース入り製品はあったが、紙箱入りの方が安い価格設定だったので、館長を含め初期ユーザーは紙箱入り製品に大いにお世話になったものである(笑)。 カセットの紙箱で最もオーソドックスな形は、冒頭の写真のように薄手のボール紙製で短辺の両方に開け口が設けられているタイプである。 開けた状態は次の写真のとおり。 |
* 側面のフタを開けたところ *
ほとんどの紙箱はこのタイプで、カセットに限らず石鹸など小物の紙箱で当時多く採用されていたタイプである。 上の写真のカセットは1970年頃のSONYの製品だが、同じSONYでもその少し前には下の写真のような紙箱を使っていた。 |
* SONY「MAGAZINE TAPE」 *
この箱の開け口は長辺方向になっており、上下両方にフタが付いている。 この方がカセットを取り出しやすいが、紙の接着部分が短辺方向だけになるので、箱としての強度や耐久性に難があるのではないかと思われる(笑)。 続いて、ちょっと変わったタイプを紹介する。 |
* SANYO「FS」 *
これも長辺方向が開け口なのだが、フタが特大で、パッケージの一面を丸々覆うようになっている。 閉めるときは、開け口の反対側の長辺部分にある溝にタブを挟んで止めるようになっている。 これなら、箱としての強度も保てるだろう(笑)。 フタで隠れる部分には注意書きなどを記載することもできる。 このタイプは、1970年代初頭の複数メーカーの初期の製品で見ることができる。 |
* COLUMBIA「TRK」 *
* AIWA「Compact Cassette」 *
次に紹介するのは、日立の輸出用カセットである。 短辺方向が開け口となっているのはポピュラータイプと同じだが、開け口のタブが二重になっている。 |
* HITACHI 輸出用カセット *
実は、このパッケージ、裏面を見ると分かるように郵送用の封筒になっている。 録音済みのカセットをこの箱に入れ、住所を記入し切手を貼ってポストに投函すればOKである。 郵送中、不用意にフタが開かないようにダブルのタブでロックをかけている形になっている。 フタの部分にテープでも貼れば必要のない機構だが、概して大ざっぱなアメリカ人向けに(失礼)、フタを閉めるだけで簡単に発送できるこのような工夫をしたのではないだろうか(笑)。 館長なら、さらにこの上からセロテープを貼りたいところである(笑)。 |
* 裏面は郵送用の封筒になっている。 *
* フタを閉めた状態(大小のタブにより自然には開きにくいようになっている。) *
アメリカといえば、アメリカに本社がある3M(Scotch)の初期製品の紙箱は一味違う。 |
* 3M(Scotch)「272」 *
長辺の一辺がヒンジになっており、正面というか上面の大きなフタが片開きでガバッと開く。 これぞ紙箱!という感じで、出し入れは大変容易である。 箱自体は厚手のボール紙でつくられており、頑丈である。 ただ、フタの部分に留めがなく、フタと箱との摩擦によって閉じた状態をキープしているだけなので、うっかり逆さにしたりすると中身が飛び出してしまう可能性がある。 実はこの形式は、カセット以前のオープンリールテープの紙箱と同じで、オープンリールテープを手がけてきた3Mとしては、ごく自然な発想の紙箱だったのだろう。 そしてその後、Scotchは1977年に、何とプロ用に使われる10号オープンリールテープの紙箱と同じ大きさ・形のケースでカセットを販売している。 それがこれ(↓)。名付けて「PRO-PACK(プロパック)」 |
* 3M(Scotch)「Master CASSETTE PRO-PACK」 *
確かに当時のScotch206などのオープンリールテープの箱と似ている。 しかし、これは紙箱と言うよりも、6巻入り企画商品の収納ケースみたいなものなので、今回の記事の主旨からは外れるかもしれない(笑)。 長く使っているとよれよれになり、破けたり、カビが生えてきたり(笑)、フタが留まらなくなったりと、プラケースに比べると何とも弱々しく、頼りなさを感じる紙箱ではあるが、趣味の対象として今あらためて眺めて見みると、何とも言えない味わいとぬくもりが感じられ、佳いものだと思う。 |
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