祝 国産カセット誕生60周年
〜 初期マクセルカセットの復刻版を鑑賞する! 〜
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国産のカセットは1966年に誕生した。 本年(2026年)は、それから60周年にあたる節目の年である。 オランダのフィリップス社が開発したツインリールタイプのカートリッジ式磁気テープ「Compact Cassette」の日本における歴史は、1965年に三越百貨店で販売されたことで始まった。 もちろん、その時三越で販売されたのはフィリップス製の輸入品だったのだが、翌年の66年に、早くも日本でのカセット製造が始まったのである。 最初に製造を始めたのは当時の東京電気化学工業(TDK)で、66年6月に松下電器(当時)向けのOEM供給を開始した。 そして、日立マクセル(当時)も製造を始め、同年7月に国産カセット初の商品化を行っている。 ソニーはやや遅れて66年11月に販売を開始、その後、69年に富士写真フイルム(当時)と日本コロムビアも販売を開始したことで、当時の国産磁気テープメーカー全てがカセットテープの製造販売に参入することになった。 この辺の詳細は、「ステレオ時代neo Vol.11」(サンエイムック)において、館長が「カセット第1号機物語」という記事を書かせてもらったので、ご興味のある方はご一読いただければと思う。 さて、前置きが長くなってしまったが、国産カセット誕生60周年にあたって、それを記念する形で興味深いカセットが先日発売された。 そのカセットというのが、冒頭の写真のものである。 一見すると、マクセルの初期カセット「C-60」のようだが、実はこれ、そのレプリカで、タワーレコードが数量限定で復刻版として発売した「C-60R」という製品である。 「復刻版」となると、オリジナルと比較してみたくなるのが人の常というもので(笑)、今回は、60年前に始まった国産カセットの歴史に想いを寄せながら、初期マクセルカセットのオリジナルと復刻版を比較鑑賞してみることにしよう。 |
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タワーレコードのネット通販のページで予約したときには気が付かなかったのだが、送られてきたこのカセットの実物をを見た瞬間、まず思ったのは、 「あれっ、色が違う」 ということだった。 パッケージの黄色の色合いが、博物館所蔵のオリジナルと微妙に違うのである。 |
表面
上が「復刻版」で、下が「オリジナル」
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復刻版(画像上)の方が色が薄い。 この製品、販売期間が3〜4年ほどあり、博物館所蔵のオリジナルは、発売後しばらくしてからのものと思われるので、色が異なるのは販売時期が異なるためかもしれない。 66年に発売された初期のものは復刻版のような色だったのかも。 |
側面
上が復刻版、下がオリジナル
(オリジナルの方は黄色が褪色している)
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この製品のパッケージは、黄色と言うか、鮮やかなカナリア色というイメージだったので、館長の個人的な第一印象としてちょっと違和感を抱いたポイントである。 では、デザインについてはどうか。 デザインの方は、まず、表面についてはほぼ完璧な再現だと思う。 素晴らしい! 当時のマクセルの地球ロゴもほぼ完コピ、と言うより、オリジナルよりきれいなくらいである(笑)。 |
ロゴ部分の拡大
左が復刻版、右がオリジナル
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側面についても、ほぼオリジナルと同じ。微妙に大きさが違うが、これはインデックスラベルの印刷の都合によるものかもしれない。 裏面については、バーコードやリサイクルマークの表示など現役製品としてやむを得ない部分があるので、オリジナルそのままとはいかないが、「マクセル コンパクトカセット C-60は 往復で60分ご使用になれます。」のコメントのマルチリンガル表示は、その記載内容、使用言語、言語数、ともにオリジナルどおりにきちんと再現されている。 |
上が復刻版で下がオリジナル
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しかし、プラケースについてはかなり異なっており、裏面の透明部分の形状、ケースの材質・重量感や全体がラウンドタイプのように丸みを帯びていることなど、正直全く別物という感じである。 それでも、現行品のような全体が透明なプラケースではなく、ベース部分がブラックになっており、できるだけ似ているものを探して用意した努力がうかがえる。 現在ではこれが限界なのだろう。 もちろん、特注でケースをつくればオリジナル同等のものはつくれるかもしれないが、その場合プラケースだけで相当な金額になりそうである。 次に、インデックスカードを比較してみよう。 |
インデックスカード(上2つが表面、下2つが裏面)
いずれも上が復刻版で下がオリジナル
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カラーの色合いやパッケージの裏面にあたる部分の表記を除けば、ほぼ完璧なコピーである。 強いて言えば、復刻版の方が文字つぶれが少なくクリアである(笑)。 復刻版の紙の材質も、昨今の製品のようにペラペラではなく、厚手のものが使われていて、オリジナルの雰囲気に近い。 復刻版の方がカードの幅が微妙に大きいのは、プラケースに合わせたためと思われる。 それでは、カセット本体の方はどうだろうか。 |
カセット本体(上2つがA面、下2つがB面)
いずれも上が復刻版で下がオリジナル
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本体のラベルも色が違う・・・。 よく見ると、色だけではなく、録音内容を書き込むインデックスの部分が、復刻版の方は白枠、オリジナルの方は白抜きになっている。 あらためて66年発売当時の宣伝等に掲載されている製品画像を確認してみると、白枠であった。 この製品には異なるバージョンがあることが分かったので、色の違いもそのせいかもしれない。 おそらく、復刻版は発売当初のものを見本にして作成したのだろう。 色やインデックスを除くと、復刻版の本体ラベルはオリジナルとほぼ同一である。 さらに驚くことに、本体のハーフの色もほぼ同じである。 よーく見れば微妙に違うのだが、それは誤差の範囲と言える程度である。今どき、よくぞこれだけ似た色のハーフが用意できたものだと感心する。 欲を言うと、初期のバージョンはハーフの接合をタッピングビスではなく、ビスとナットを使って留めているので、それを再現すれば完璧であった。(もちろんこれは、無いものねだりである。笑)。 では最後に、テープはどうだろうか。較べてみよう。 |
テープ面
(リーダーテープ部分)
上が復刻版で下がオリジナル
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リーダーテープはどちらも透明だが、復刻版の方は薄いブルーの色が付いている。 ちなみに、どちらにもヘッドクリーニング機能はない。 復刻版のヘッドパッドはオリジナルよりかなり幅広で、現役製品のものをそのまま使用していると思われる。これはやむを得ないところだろう。 そしてテープの磁性体部分を見て驚いた! なんと、磁性体の塗ってあるテープ本体は、復刻版もオリジナルもほとんど同じ色をしているのだ。 |
テープ面
(テープ本体の磁性体部分)
上が復刻版で下がオリジナル
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どちらのテープも、いかにも「ガンマ酸化鉄を使っています」と言わんばかりの茶色なのだが、ガンマ酸化鉄を使っているからといって、全てがこれと同じ色というわけではなく、バインダーなどの違いによって製品ごとに色が微妙に異なる。 それなのに、ほとんど同じ色をしているというは驚きである。しかも、60年という時差を超えてである。 ちなみに、マクセルの現役製品である「UR」のテープとは色味がかなり違う。 タワーレコードの製品紹介ページによると、この復刻版は「RTM」のTypeT(ノーマルポジション用)のテープを使っているとのことである。 RTM(Recording The Masters)社はフランスのメーカーで、現役でカセットやオープンリールテープを製造しており、同社のカセットは、現在製造されている製品としては最高の性能と言われている。 できるだけ似た色のテープということでRTMを採用したのだと思うが、現行最高性能と約60年前のマクセルのテープが同じ色というのは何とも感慨深い。 テープの色が同じだと「では、テープの性能や音はどうなの?」という疑問と興味が湧くが、録音の比較はやめておこう。 復刻版はあくまで「レプリカ」であり「当時の仕様とは異なる」とHPにはっきり書かれている。 テープの色はそっくりでも性能は違うのだ。録音比較しても意味がないのである。 |
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最後に、このたび、このような製品を世に送り出していただいたタワーレコード、そして、製造元の電響社の皆様、さらには、たぶん裏でしっかり監修をしていたと思われるマクセルさん(笑)には心からの敬意と感謝を申し上げたい。 60周年を迎えた国産カセットの歴史に対する、大いなるリスペクトが伝わってくる製品であった。 |
(本文の記述は、全て館長の個人的な考え、感想に基づいています。)
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