〜 カセット初心者のための基礎知識 〜
* 「カセットコーダーに強くなる本」表紙 *
今回はカセットに関する文献の紹介である。 文献というと大袈裟だが、「カセットコーダーに強くなる本」というB6判20ページほどの冊子で、館長が初めて手にした1970年頃のSONYのカセットテレコに付属していたものである。 カセットテープやテレコに関する基礎知識が書かれており、カセット初心者にとっては大変参考になる内容である。 とは言え、今さら役に立つというものではないが、眺めていると若かりし頃が想い出され懐かしいので中身を紹介してみたい(笑)。 なお、「カセットコーダー」というのは、当時のSONY流の「カセットレコーダー」の呼び方で、SONYはテープレコーダーを「テープコーダー」などと当時は「レ抜き」で呼んでいた。 |
* 目次と1ページ目 *
(以下の画像はクリックすると拡大されます。)
表紙をめくると目次があり、トップ項目はヘッドのよごれの話である。 良い音で録音するためにはヘッドのメンテナンスは基本中の基本で、カセットレコーダーに限る話ではないが、当時のカセットテープはバインダーが弱かったせいなのか粉落ち(磁性体の剥離)が多く、うっかりしているとヘッドの先端に茶色いゴミが付着している・・ということはよくあった。 掃除を怠ると、録再音が小さくなったり高音が伸びなくなったりという不都合が生じる。 特に、カセットの場合はテープスピードが遅いため、ちょっとしたヘッドの汚れでも影響が大きい。 ヘッドの汚れが原因ということを知らないと、メーカーにクレームを入れたり、修理依頼ということになりかねないので、メーカーとしてはこの冊子で一番伝えたかったことがこれなのだろうと想像する。 |
* 2〜3 ページ *
次のページは一般的な注意である。 「強いショック」、「ほこりや湿気」、「高温・低温」は、テレコに限らず機械物の扱いとしては定番の注意事項である。 「磁石」や「テレビの上」は磁気テープの取り扱い上の注意として定番である。 3ページ以降は、カセットに関する一般的な知識と注意事項になる。 まずは、誤消去防止用のツメについてで、これはカセットを扱う上での必須の知識である。 |
* 4〜5ページ *
4ページには、誤消去防止の爪を折ってしまっても、テープを貼ることにより再び録音が可能になることが記載されている。 なお、本冊子はクロムテープの登場以前の物なので、誤消去防止用のツメの隣にあるクロムテープの検出穴についての記述はない。(当然、メタルテープの検出穴の記述もない。) 4ページ下段には、テープのたるみを取る方法が書かれている。 ハブに六角鉛筆を差し込んで回すという、誰もがやったことがある定番中の定番の扱い方法が示されている。 たるみを取る程度なら、わざわざ鉛筆を差し込まなくても指で回しても済むと思うが、ある程度テープを巻きたいという場合には、六角鉛筆は極めて便利な道具である。 鉛筆の太さもカセットのハブに丁度良い。鉛筆の太さに合わせてカセットの規格を作ったと思うほどである(笑)。 5ページ上段の注意は、何でも分解したがる男子向けか? カセットに限らず、やたらと分解してはいけない(笑)。 カセットは内部の部品が小さく、細いテープが静電気や巻き癖で思わぬ動きをすることもあり、うまくやらないと、分解して元に戻すのは結構厄介である。 5ページ下段はSONY独自の「エンドアラーム」について記述されている。 当時のSONYのカセットテレコには、テープ終端でメカを自動的に解除させる機能(オートシャットオフ)が無く、手動で停止させない限りモーターが回りっぱなしの状態であった。 「エンドアラーム」はテープエンドを知らせるための機能としてSONYが考えた仕組みで、テレコのヘッドの脇にあるオートセンサー接点がテープの終端に貼ってあるアルミホイルにより導通することで動作する。 よって、動作させるためには、レコーダーだけではなくテープの方もこの仕組みに対応している必要があるが、対応しているテープはSONY製のものだけであった。 なお、「エンドアラーム」が動作するのは録音時のみで、再生時には鳴らない。再生の場合は、音が止まればテープエンドだと分かるからだろう。 また、説明ではアラーム音は「ピー」となっているが、実際は「プイ−〜」みたいな音(電池が減っていたせいか?)だった記憶がある。 |
* 6〜7ページ *
6ページには外部マイクを使った録音方法が記載されている。 当時のSONYのカセットテレコは、マイクを内蔵しているのがウリであった。 70年代以降のテレコではマイク内蔵が常識となったが、それまでは安っぽいマイクが附属品として付いていることがほとんどであった。 マイクが内蔵されていることで、録音時にマイクをセッティングする必要がなくなった。 しかも、内蔵のマイクはエレクトレットコンデンサーマイクという結構高性能なマイクで、感度も音質も良かった。 しかし、高性能がアダで内部のモーターの音まで拾ってしまうという難点があり、それを避けるためには外部マイクを使ったほうがよい。 マイクは別売りで、記載のようにリモコン付きのものがあった。 このリモコンは記載のように「一時停止」をさせるものであるが、いわゆるポーズボタンとは違い、単にモーターの回転を止める(あるいは、電源をOFFにする)だけのものである。 そのため、停止中はメカが解放されず、ピンチローラーがキャプスタンに密着した状態のままなので、長時間の停止はタブーである。 7ページは、マイク録音時の基礎知識と注意事項である。 この冊子が作成されたのは、いわゆる「ナマロク」ブーム以前なので、マイクを使う場面はもっぱら音声録音目的という図柄になっている。 |
* 8〜9ページ *
リモコンは単体でも別売されており、8ページにはその使用例が載っている。 下段にあるようなフットスイッチでの使い方は、両手が自由になるため、速記者がテープ起こしをする際に便利だったようだ。 9ページは外部接続用のジャックとプラグの種類で、いずれもモノラル用である。 テレコを使っていれば常識的なことだが、初心者にとっては、テレコに開いている接続穴が、実はいろいろ種類があるということが分かる。 10ページ以降の説明につながる内容でもある。 |
* 10〜11ページ *
* 12〜13ページ *
10〜13ページは、外部接続端子を使ったいろいろな録音方法である。 テレビやラジオのスピーカーにテレコのマイクを近づけて録音するのではなく、接続コードを使えば家族の声が一緒に録音されてしまうのが防げるというものである(笑)。 |
* 14〜15ページ *
14〜15ページは主にヘッド周りの清掃の話である。 館長もその昔、これを見てヘッド清掃の重要性を理解した。 「カセットコーダー付属のヘッドクリーニング棒」とは綿棒のことで、附属品として3本の綿棒が同梱されていた。 勿論、この3本はすぐに使ってしまったため綿棒を買い足し、また、綿棒だけではピンチローラーの清掃ができないので、クリーニング液も購入した。 15ページに記載されているヘッドの消磁についても気になったが、当時の学生のお小遣いでは、ヘッドの消磁だけのために2200円の投資はとてもできなかった(笑)。 |
* 16〜17ページ *
16〜17ページは「テレコあるある集」である。 テレコの調子が悪くなったときに、これらのいずれでもなく、本当の故障だと分かったときにはちょっと悲しかった(笑)。 |
* 18〜19ページ *
* 20ページ *
19ページ以降は別売のテープやアクセサリの一覧である。 値段が安いと思うものもあるが、この冊子当時(1970年頃)と今の物価を比較すると、4〜5倍位だろうか。 既製品は高いので、秋葉原で部品を買ってきてケーブルを自作したことも思い出される。 いろいろと懐かしいことが思い出される冊子である。 |
このページのTOPへ